「グーグルチューブはメディア企業から訴えられるのか」--著作権侵害をめぐる訴訟の可能性をさぐる - (page 3)

坂和敏(編集部)2006年10月20日 06時35分

 Franciscoは19日付のコラム「The media cartel vs. Google」のなかでもこの問題を採り上げ、「大手メディア企業にはGoogle-YouTubeを訴える肝っ玉も動機付けもないだろう」("Big media won't have the nerve or incentive")と述べている。

 このコラムの要旨をかいつまんでいうと、メディア企業がGoogle-YouTubeを訴えても勝てないことの最大の理由は、やはり両社がDMCAのセーフハーバーで免責されるからということになるが、それ以外にも興味深い指摘がいくつかみられる。まず、米国最大のSNS「MySpace」を傘下に持つNews Corp.は、先ごろGoogleから3年半にわたって広告配信の権利を与える見返りとして9億ドルを手にすることになったほか、MySpaceからYouTubeにあるビデオにアクセスしているユーザーも非常に多いことも手伝って、現時点でGoogleに対して最大の影響力を持つといわれている。だが、そんなNews Corp.も実際にはMySpace内で大量の著作権付きコンテンツが勝手に公開されているため、へたにGoogleを訴えてしまうと、それが自分のところに跳ね返って来かねないおそれがあるという。また、ほかの2社もそれぞれGoogle-YouTubeのどちらかまたは双方と提携している。

 そうしたことから、EFFのvon Lohmannは「大手メディア企業がGoogleを訴える可能性は低い("There's a low possibility that the big guys will sue Google")」としつつ、ただし「それでも訴訟はおこされるだろう。それらはYouTubeではなく、もっと手の届きやすいところにある獲物をねらったものになる」("They just won't be aimed at YouTube, but rather the lower hanging fruit")と述べている。前述のUniversal Music GroupがGrouperおよびBolt.comを訴えた動きは、まさにvon Lohmannのこの考えと一致するものといえよう(ちなみに、このBambi Franciscoとvon Lohmannとの対談を撮したビデオがFranciscoのブログで公開されている)。

 なお、こちらのブログにも、DMCAがこのGoogle-YouTubeをめぐる問題だけでなく、インターネット全体のあり方にいかなる影響を及ぼすかについて触れた箇所がある。ただし、これについては改めて別の機会に十分な検討をできればと思う。

 さらに、DMCAに関連してわれわれ日本のユーザーや企業への影響はどうかという点について法律の専門家に問い合わせたところ、次のような回答が得られた。

 「DMCAに相当する日本の法律としては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(通称「プロバイダ責任法」)3条がある。両社はいずれも、著作権を侵害するコンテンツがプロバイダのサイトにアップロードされた場合のプロバイダの責任制限に関する規定だが、ただし両規定の中身は相当に異なることから、米国のDMCAに関する議論がそのまま日本のプロバイダ責任法にあてはまることはない」(森・濱田松本法律事務所 齋藤浩貴弁護士

 YouTubeがいままで通り別会社として運営される(そして、日本国内には今後も著作権侵害に関する「苦情の受付窓口」ができない)とすれば、日本のメディア企業やユーザーにとっては、自分たちが生み出したり、視聴したりするものが他国の法律に縛られる(しかも、利害を共にする親会社Googleの日本のオペレーションは存在する)という一種不可思議な状況が続くことになるかもしれない。そうしたこともふまえ、この点については今後さらに掘り下げていきたいと思う。

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