米ヤフーの「内憂外患」--グーグルとの差は「開くばかり」か - (page 2)

坂和敏(編集部)2006年10月18日 00時11分

マネジメントの問題とフォーカスの欠如

 CEOのTerry Semelは、ネットバブル崩壊後の苦境にあえいでいたYahooを立ち直らせた「大人の経営者」である。が、事業が成長局面に変わったことの影響からか、Semelの持ち込んだ「規律」がマイナスに作用している可能性がある。

 また、Yahooが多角的に事業を行っていることが裏目に出ているところもある。同社は、ニュースではCNNなどと、スポーツの分野ではESPNと、ウェブメールではMicrosoftと、インスタントメッセージ(IM)ではAOLと、ソーシャルネットワークではMySpaceと、そして検索ではGoogleと争っているが、これに対して「コンテンツ企業なのか、サービスを提供する企業なのか、それともポータルなのか・・・」(Publicis Groupe傘下のコンサルティング企業、DenuoのSVP、Tim Hanlon)といった声も聞かれる。

官僚主義と内輪もめ

 さらに、Yahooの内部からは、官僚主義や内輪もめを指摘する声も上がっている。たとえばメディアグループと検索グループがそれぞれビデオ共有サービスを提供したいと争っていた(結果は検索グループの勝利)隙に、同社はYouTubeにこの市場で圧倒的な優位を築かれてしまったという。

買収・提携交渉の稚拙ぶり

 上記の官僚主義と関連するかもしれないが、外部との交渉もスピード感を失い、融通が利かなくなっている面があるという。たとえば、YouTubeとの買収交渉がうまくいかなかった一因には、著作権付きコンテンツの取り扱いに関してYahooがYouTubeに保証(assurances)を要求していたという点もあった。それに対して、この点をあまり重要視していなかったGoogleがさっさと話をまとめてしまった、ということらしい。また、別の大手メディア企業の幹部も自社とYahooとの提携交渉がとん挫したことに関し、「彼らは頭がいい連中だが、しかし本物の問題を抱えている」とコメントしている。

人材の確保が困難に

 こうしたイメージの低下や株価の不振が重なると、有能な人材の採用が難しくなる。また、既存の従業員のなかにもストックオプションが塩漬け同然になっていることに不満を抱き、もっと勢いのある新興企業に移る例も出てくる。Facebookのchief revenue officerになったMike Murphyや、YouTubeのchief financial officerになったGideon Yuはその代表例(なお、Yahooは人材流出を食い止めようと、一部の有力幹部に大幅な昇給を認めているという)。

新サービス開発で後手に

 最新のトレンドに便乗する新しいサービスや革新的な広告フォーマットの開発で後手にまわっている。その代表例が、ソーシャルネットワークやビデオの分野だ。また、映画会社出身のTemelは2年ほど前、ビデオにフォーカスした新しいサイトの立ち上げを試みたが、後にこの計画を断念した。

広告配信ネットワークの不振

 戦略的にもっとも混乱を極めているのは、他のサイトに広告を提供する広告配信ネットワーク分野。テキスト広告でGoogleに大きく水を開けられ、さらに大口顧客だったMicrosoftのMSNはいまや競合となってしまった。また、GoogleのAdSenseに相当するYahoo Publisher Networkからは、The Wall Street Journalが抜けている・・・。

 以上のように、実にさまざまな問題を抱えながらも、それでも四半期あたり5億ドル程度のキャッシュフロー(「A VC」ブログ)を生み出すところはさすがと思えるのだが・・・。いずれにせよ、こうした悪循環を立ちきり、生き残りを賭けた新たな拡大の方向性を見いだすために、Semelらの経営陣がどんな策を講じるのか。最新の決算報告の結果を受けて、この点にさらに大きな注目が集まるものと思われる。

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