コミュニティーマーケティングに強くなる--後編

海老根智仁(株式会社オプト 代表取締役CEO)2007年05月07日 08時05分

 先日2007年4月16日の日本経済新聞において、SNSの効用が大々的に報じられました。私の連載にとってまさにタイムリーな記事であったと思います。その記事の中では、「SNS各社が企業と組んでそれをマーケティングに活用する動きが広がってきた。(中略)友人同士の交流というSNSの特徴に着目、口コミで商品やサービスの認知を高める。」などその企業利用の広がりを、トヨタ自動車、花王など具体的な企業名を挙げて取り上げていました。

 広告代理店は、ネット上のコミュニティー(以下、サイバーコミュニティー)をもっとよく知り、広告主に提案をしていかなければなりません。上記記事の中でもその効用が紹介されていましたが、「企業ブランドや製品イメージを浸透させられる」「企業と個人(エンドユーザー)の距離感を縮め、親近感を持たせる」等、広告の役割も担っているからです。

 しかしサイバーコミュニティーの役割や機能はそれだけではありません。前編における復習を含め、私が過去の論文で書いたことを整理致します。広告業に携わる人はもっと勉強してほしいのです。

 サイバーコミュニティーの機能は、大きくわけて(1)開発機能、(2)流通機能、(3)マーケティング機能、(4)製品そのものとしての機能、の4つであります。またマーケティング機能に関しては、現在次の4つがネット上で観察されます。

  1. プロモーション機能:商品・サービスに対する口コミやプロモーションの役割を有する。
  2. 製品評価機能:商品やサービスの評価、判断等を有する
  3. サポート機能:商品やサービスの質問、クレーム等の解決を促進させる。
  4. ニーズ調査機能:商品やサービスのニーズを発見するもしくはテストマーケティングの役割を有する。

 サイバーコミュニティーは、ネット上に自然発生するもの(ユーザーが作るもの)と企業がその意思で作るものがあるわけですから、前者においては、結果として持つ機能、後者においては、意図的に持つ機能になるわけです。

 これからお話するのは、クレジットカードのサイバーコミュニティーに関する事例です。この比較研究は、同論文で実施したものであり、その目的は(1)サイバーコミュニティーにおけるニーズ調査と個々の消費者に対するオンラインアンケート調査のマーケティング効果の違いと、(2)設立や運営の趣旨が異なるサイバーコミュニティーにおけるニーズ調査の効果の違い、を分析したものです。

 この研究では、自然発生的なサイバーコミュニティーと企業が営利目的を持って開設したものの効果の差も調べております。結果は(業種や商品によってその効果は違うと思いますが)、以下のとおりです。

  • 個人に対して行うオンラインアンケートより、サイバーコミュニティーに対してマーケティング活動を行う方が、ニーズ調査の有効性が高い。
  • 営利目的より自然発生的にできたサイバーコミュニティーの方が、他人の発言を参照したユーザー発言に結果として深みのある参考意見が出やすい(「参考」とは、企業のマーケティング担当者にとって参考になる意見であるということ)。

 上記は一例に過ぎませんが、今やネット上のサイバーコミュニティーを企業のマーケティング活動に活かせる時代になってきたことは、誰も否定はしないと思うのです。広告業に携わる皆様、この分野に強くなり、ぜひ業務領域を広げて参りましょう。

海老根智仁
株式会社オプト 代表取締役CEO

大手広告代理店退職後、財団法人社会経済生産性本部において経営コンサルタントの認定を受け、その後1999年9月株式会社オプト入社。2001年1月より同社代表取締役COO。2006年1月より同社代表取締役CEO。慶應義塾大学経済学部卒、産能大学大学院経営情報学研究科(MBA課程)卒、中小企業診断士。デジタルハリウッド大学院教授(「インターネットマーケティング」担当)。「サイバーコミュニティを使った『ニーズ調査』の有効性に関する比較研究」(経営情報学会2000年、共同研究)、「インターネット広告による売上革新」(同文舘出版2006年、共著)等学会・講演活動多数。

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