日本のSNS利用はもう限界なのか - (page 2)

SNSは限界に達したのか

 海外と比べて「濃い」コミットメントを求め、求められる傾向が強い日本のSNS。「ミク中(ミクシィ中毒)」と呼ばれる人たちのように、常にケータイでマイミクのエントリを知り、それへのコメントを書き込み、また、ふと目にした出来事をケータイで撮影し、アップロードすることを繰り返し、自宅に戻ればPCからまとめて一日の考えをエントリするのが習慣化する――これほどまでの中毒症状ではないものの、少なからず似た行動をとっている人は多い。また、アルファブロガー(不思議な和製英語だという指摘がありますね)としての知名度はないものの、mixiやGREEの一部のコミュニティ内部で広く知られるSNSコラムニストは数多く存在している。

 とはいえ、全体的にはSNSというものの目新しさ、珍しさは、すでに薄まり始めているようだ(参照:SNSブームは終息の兆しか--2006年夏から平均滞在時間は減少へ)。これには前述したようなモバイルからの利用が必ずしも反映されていない可能性があるので、依然として相対的な利用は減少しているわけではないかもしれない。しかし、加入者数の増加傾向が鈍化しつつあることは事実であり、ある程度の普及上限にまで達しつつあることが考えられる。ネットユーザーのうちでも、ある程度アクティブであり、かつリテラシーがなければSNSに参画しないだろうし、また、仮に参加してもその「濃さ」を求められることに辟易してしまう人も少なくないに違いない。

 もちろん、ケータイ特有のサービスとして開始されたモバゲータウンやEZ GREEのようなサービスがより若い世代を中心に伸びており、PCからのアクセスユーザーとは異なるセグメントの開拓に貢献していることは事実だろう。また、モバゲータウンのようにアバターという仕掛けを導入し、それが人気を博している様子は、あたかも韓国のSNSのように比較的「濃いコミットメント」を求めない傾向を代表するものなのかもしれない。ただ、それはPCベースのSNSが所属コミュニティのアイコンによって、ユーザーの属性や志向を示す=その人を外部の象徴の組み合わせによって表していたのに対して、ケータイ×日本型SNS特有の状況下ではそれが困難であるがためにアバターが代替利用されているだけなのかもしれない(アバターの造作になんらかの共通の符号的意味/理解が形成されるなど)。いずれにせよ、その潜在ユーザー規模は絶対的な人口区分から推定して、決して大きな塊ではないといわざるを得ない。

SNSはどこに行くのか

  以前、SNSとケータイの組み合わせは絶大なパワーを生み出すのではないか、というエントリをしたことがあった。しかし、その時僕がイメージしていたケータイSNSはキャリア自らが提供するものであり、ケータイの基本機能であるアドレスブックやメーラーとの一体的な運用が可能なもので、EZ GREEやソフトバンクモバイルのS!タウンやS!ループとは異なるものだ。

 また、その後、現在のSNSが、アーキテクチャそのものの性格上、人間社会の表象としては不十分であることを感じることが増えた。例えば、前述したような「ミク中」状態にまで利用者をドライブしてしまうような過度な「つながり」感の醸成は、人と人のつながりを人工的、かつ平面的に敷設したために発生したものだ。結果、本来ならば濃淡があり、多層化されているためにおこらないことが、つながりが錯綜し、その維持に(本来、いったんリンクされてしまえば消えることはないにも関わらず、希薄になってはいけないという心理的な錯誤によって)大きなエネルギーを費やさざるを得ない状況に(少なくとも多くの日本人の気質的には)入ってしまっている。

 結果、そのような単純すぎるSNSの中の社会構造は、決して悪ではないものの、人によっては不要なストレスを生じさせる原因になりかねない(逆に、それを楽しんでいる人が多くいることも事実だが)。社会的役割ごとにプロファイルを複数所持でき、それらを階層化したり、あるいはリンクが時系列に従って希薄な関係性になっていくことを許し、その際にはその情報の伝達量も希薄になっていく(あるいは優先度が落ちていく)といった、認知的な社会的資本の捉えかたを実装したSNSの出現が望ましいのではないか。

 このような次世代型のSNSであれば、単に社会的資本といわれる人間関係のつながり具合を楽しむだけではなく、より有用なツールとして活用できる可能性は強く、レコメンデーションなどマーケティング要素という点でもより信頼性の高い機能提供が可能になってくるのではないかと思うのだが。だれか作ってくれないだろうか?

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