iPhone 3G、日本のモバイル業界を変えるか

2008年6月10日 13時00分

 新型iPhoneが、3Gの携帯電話ネットワークとWi-Fiによるインターネットアクセス、Microsoft Exchangeへの対応、GPS搭載、専用アプリケーションをダウンロードできるApp Storeなどを揃えて登場しました。またAppleは、.Macサービスを進化させた「MobileMe」も発表しています。これはMac、Windows PC、iPhone間でメール、カレンダー、連絡先、写真などを同期するクラウドストレージです。7月11日には日本でもiPhone 3Gがソフトバンクショップで発売されます。販売条件などはまだ公表されていませんが、米国では$199(8GBモデル)、$299(16GBモデル)という価格設定になっています。

 AppleとiPhone 3Gは、日本の携帯電話業界を変えることになるのでしょうか。端末メーカー、キャリア、コンテンツプロバイダ、アプリケーション、ユーザー、ビジネスが受けるインパクトとはどのようなものなのでしょうか。パネリストの皆さんのお考えを聞かせてください。


  • 江島健太郎
    江島健太郎さん (エンジニア、アントレプレナー)
    いまWWDCに参加しています。

    これからiPhone関連のテクニカルセッションに集中して5日間の日程を終える予定ですが、iPhoneの技術プラットフォームとしての圧倒的な存在感に打ちのめされています。メモリや画面サイズやバッテリーなど、種々のリソースに制約を受けながらも、マルチタッチや加速度センサーやGPSなど各種パラダイムが完全にPCやMacを超えている。これを携帯電話と呼ぶなんてとんでもない、電話という皮をかぶって一般人に普及してしまう、未来からやってきたデバイスですよ。

    最近、iPhoneが日本で売れない、みたいな議論をしてる人を見かけますが、ほんとわかってねーなーと思います。iPhoneは今売れるかどうかで評価するようなものじゃない。そもそも電話というカテゴリーに入れて比較するのが間違ってる。iPhoneは寿命が一年もない見た目だけコロコロ変える商品サイクルのものと比べようがないでしょう、中身の格が違いすぎて。1984年のMacで登場したパーソナルコンピュータというコンセプトが1995年のWindowsに結実したように、こいつは10年後の未来を作ってるんです。こんな最先端のものが最初から何百万台も売れてることがむしろ異常なんです。

    Mac OSの次期版White Leopardは「新機能ゼロ」と公言する一方で、LLVMコンパイラの採用、ブロック構文のサポートにより行儀の良い並列化を自動で行ってくれるGrand Central Dispatcher、GPUを暗号などの汎用演算処理にも解放するOpenCLの採用など、テクノロジーフォーカスはむしろ先鋭化しており、「デベロッパを中心としたAppleの生態系が未来を作るのだ」という強い意志を感じます。そして、そこで実証された技術がぜんぶiPhone OSに降ってくるんです。

    今アップルがやろうとしてるのは、まさにかつてアップルがIBMに対してもたらしたパーソナルコンピュータ革命と同じ、「携帯キャリアというビッグブラザーを倒し、携帯というテクノロジーを個人のもとに!」ということです。そのメッセージが伝わりませんか?

    こういうとてつもなく深い技術的・文化的バックグラウンドから生まれたiPhoneみたいなものをゼロから作る能力が日本のどこかにあるか?と考えると気が遠くなります。

    で、日本の携帯電話業界を変えるかというパネルのお題ですけど、歴史に学ぶなら、ひっくり返されるに決まっています。これは、アップルがやるからというよりも、長い目でみて時代の要請であるからです。アップルは、時代を正しく読んで先に行動したというだけのことです。

    歴史は繰り返すのか、つまりアップルが切り開いた道を当時バカにされていたWindowsが逆転してしまったように、今バカにされてるAndroidが最終的に勝つのかも知れません。まだこの世に存在しない何かかも知れません。でも、そんなことはどうでもいいんです。今、パラダイムが変わった、ということだけは確かなのです。今はアップルに賭けてiPhoneの技術を学びアプリを作るのが、もっとも正しい未来への備えであり、「今という時間」の正しい使い方だと信じているからWWDCに参加しているのです。
    2008-06-11 01:10:09

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