iPhoneの普及やAndroid端末の登場で、日本でもスマートフォンの存在感が増している。世界ではスマートフォンはどのような状況にあり、今後どうなっていくのか。ジャーナリストの石川温氏が2月26日、一般社団法人 ブロードバンド推進協議会(BBA)主催のイベント「世界のスマートフォンおよびコンテンツ流通最新事情」において講演した。
石川氏はまず、日本のスマートフォン事情について、「iPhoneの一人勝ち」と語る。「0円キャンペーン」によって契約者が急増し、石川氏によるとiPhoneの国内販売台数は200万台以上とのこと。
一方のWindows陣営もウィルコムから「HYBRID W-ZERO3」が1月末に発売されたが、かつてほどの人気はないという。NTTドコモの東芝製端末「T-01A」も5万台程度にとどまるなど精彩を欠いており、HTC製の「HT-03A」は在庫の山になっていると石川氏は述べる。HT-03Aは各種割引適用後、最大4万4100円引きで販売されている状況だ。
世界の潮流としては、Androidの台頭が挙げられる。石川氏は大きなトピックとしてGoogleのAndroid端末「Nexus One」の登場を挙げた。最新のOS「Android Mobile Technology Platform 2.1」とチップセット「Snapdragon 1GHz」を搭載した高スペックモデルで、米、英、シンガポール、香港においてネット直販で販売している。石川氏によると、1カ月で8万台を販売したという。Nexus Oneの生みの親であるAndy Rubin氏に石川氏が取材したところによると、今後複数メーカーから27機種が登場する予定であるという。ただし、日本での販売は未定だ。
また、2月15日から18日までスペインのバルセロナで開催された携帯電話関連の展示会「Mobile World Congress」でも、Android勢の台頭が目立ったという。今回はNokiaとLG Electronicsの出展がなかったが、主役は既存の携帯電話からスマートフォンに移行していることを強く感じたと石川氏は語った。
このほか、Sony Ericsson Mobile Communicationsの「Xperia」も大きなトピックと石川氏。4インチのタッチパネルディスプレイに加え、相手とのコミュニケーション履歴を一覧できる「Timescape」や、携帯電話内とウェブ上の音楽や映像を一カ所で楽しめる「Mediascape」といった独自機能を搭載している。また、Mobile World Congressで発表された「Xperia X10 mini」はQVGAディスプレイを搭載した小型Android端末という、これまでにないコンセプトのモデル。AndroidはもともとQVGAの解像度に対応しておらず、Sony EricssonはGoogleに仕様変更を依頼したという。
Sony EricssonはNTTドコモ向けの端末提供から一時撤退し、独自のロードマップに従って端末を開発するようにした。また、ハード主体からソフト主体へと方針を変換、自社のタイミングで最適なハードにソフトを載せて出荷するようになっている。このため、あえてOSは旧バージョンのAndroid 1.6を採用した。
Androidをめぐっては、Motorolaや華為技術(Huawei)も本格参入している。特に注目されているのが中国市場で、中国で独自進化している「OPhone」にはMotorolaやDellも参入した。
iPhoneとAndroidを追う第3のプラットフォームとしてして注目されるのは、MicrosoftのWindows Phoneだ。ユーザーインターフェース(UI)を大幅に刷新し、開発期間を短縮するためにハードウェアの仕様をある程度統一する「シャシー戦略」を導入するなど、力を入れている。2010年末に登場予定だが、6.5シリーズとの併売になる見込みで、日本市場では当面6.5ベースが中心になると石川氏は見ている。Microsoftは、同じゲームをPC、Xbox、Windows Phoneで楽しめる「3スクリーン戦略」を推進する考えだ。
北米で高い人気を維持しているResearch In MotionのBlackBerryは、新機種の開発よりもソリューションの提供に注力しており、カレンダーや電話帳などの端末内蔵機能とアプリを連携させる機能「Super App」を推進している。
日本陣営は「ぱっとしない」(石川氏)というのが率直な印象だというが、ようやくスマートフォンに本腰を入れる気配がある。NTTドコモはXperiaを4月に発売する予定で、アプリを紹介する「ドコモマーケット」も開始する。2010年度には5機種前後を投入し、メーカーも増やす見込みだ。KDDIも夏にスマートフォンを2機種を発売する予定。EZwebメールやLISMOに標準対応するほか、おサイフケータイも年末から年明けには対応すると見られる。
ソフトバンクモバイルはiPhoneを中心に展開していくと見られ、法人にもターゲットを拡大している。TwitterとUstreamをコアコンテンツに据え、特にTwitterは「第3のコミュニケーションツール」として、情報サービスの有料化やキャリアサービスでの展開も考えられると石川氏は話す。
今後のスマートフォンのあるべき姿として、石川氏は既存の国内携帯電話との融合、オープンOS上でのキャリアサービスの展開を挙げ、「すべてがiPhone化していく」とした。
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