次期OS「Windows 7」の発売を前にして、マイクロソフト日本法人の前社長で現在Microsoft コンシューマー&オンライン担当 コーポレートバイスプレジデントを務めるDarren Huston氏が来日した。マイクロソフトでは、報道関係者がWindows 7を一般発売前に体験できるショールームとして「Windows 7 Digital Life Maison」を開設するなど、発売に向けた準備を着々と進めている。
Huston氏も今回の来日で、日本のPCメーカーをくまなく訪問しているようだ。同氏に、PC業界の現状や最新OSに対する思いを聞いた。
Huston氏は、日本法人社長として米国を離れている間に「米国の経済状況が一変したことを実感している」と言う。人々の消費マインドは冷え込み、高級品を扱うショッピングモールは人もまばらで、支払い能力の低い人が購入した家がすべて空き家になっている状況を日々目にするためだ。PC業界でも、Circuit CityやCompUSAといった大手家電量販店が経営破たんしており、「金融危機があらゆる業界に影響を与えている」とHuston氏は語る。
ただしHuston氏は、こうした状況下でもPC業界を前向きにとらえている。というのは、ネットブックなど新たなPCカテゴリが登場したり、ディスカウントストア大手のWalmartが安価なPCの販売を始めるなどして、PCの大衆化が加速しているからだ。
「PCメーカーやMicrosoftにとっては、WalmartやBest Buyといったディスカウント店が安価なPCを売りさばいていることはそれほどメリットがあることではない。むしろPCメーカーにとっては、小売店からの価格のプレッシャーは大きいだろう。しかしPCが普及することは業界全体にとって非常にいいことだ」とHuston氏は話す。
一方の日本市場についてHuston氏は、「小売店の種類も(米国と比べると)多く、PCの種類も多い。テレビチューナーが搭載されたハイエンドマシンもよく売れている。これは常に安価なPCが売れる米国とは大きく違うところだ。また日本ではネットブックも好調だ。これは、通信事業者と契約することを前提に100円で提供するといったモデルが受け入れられたこともあるだろう。米国ではもともとPCが安価なため、ネットブックとの価格差が見えにくく、日本ほどは受け入れられていないのが現状だ。つまり日本は、非常に高価なPCと安価なネットブックの両極端なモデルが売れていると言えるだろう」と分析している。
Windows 7の登場と同時に、「ハイエンドとローエンドの中間となる新しいカテゴリのPCが登場する」とHuston氏は語る。「CULV(Consumer Ultra Low Voltage)PC」と同氏が呼ぶこのカテゴリの製品は、「ハイエンドのようにテレビチューナーなどはついていないが、ネットブックよりスクリーンサイズが大きく、ハードディスクやDVDドライブもついており、Windowsの機能を十分に生かすことのできるタイプのPCだ」という。ネットブックでは物足りないが、ハイエンド製品は必要ないというユーザーに対して「さらに幅広いオプションを提供できることになる」とHuston氏。このカテゴリの製品は、日本では8万円から13万円といった価格帯での提供となりそうだ。
米国の小売店では、WalmartやBest Buyといったディスカウント店が中心となってPCの販売を展開していることから、どうしてもユーザーはローエンドの製品を目にする機会が多くなる。オンラインではさまざまなカスタマイズ製品が入手可能でも、やはり小売店の販売力は大きい。「米国でApple製品が売れているのは、ローエンド以外の製品も幅広くそろえていることが大きい」とHuston氏は見ている。
Microsoftが直営小売店舗を展開すると発表した理由はここにある。
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