D5000の最大の特徴は、ライブビュー撮影が可能な2.7型の「バリアングル液晶モニター」を搭載したことだ。写真だけでなく動画機能も備えたD5000は、バリアングル液晶モニターを動かすことで、ハイアングルやローアングル、フィンダーのみでは実現できなかった自分撮りまでもを自由に撮影できる。
このバリアングルモニターについては、ざまざまな葛藤があったという。そもそも、初期のデザイン案ではバリアングルではなかったと明かす。しかし、社内からフリーアングルを、という声があったのだという。
メカニック担当の渡辺氏は、「フリーアングルは便利だが、壊れやすく、強度を保つのは非常にハードルが高いと想像がついた。天体写真を撮りながら、内心は腰が痛いと思っていた。自分でもやりたかったし、市場が求めているのは分かっていたので、やるっきゃないと。しょうがない、心中してやろうと思った」と語った。
フリーアングルも横開きか縦(下)開きかについても議論したという。それぞれのコストや使い勝手などのメリット・デメリットがあり「正解はない」と言う。また、下開きにすると構造上D60よりも大きくなるという問題点もあった。
しかし、ニコンでは、左側にメニューや画像再生などのボタン、右側にマルチセレクター、コマンドダイヤルなど、2002年に発売した「D100」からずっと同じ操作体系を継承してきている。従来の操作性を活かすなら縦開きだとして、ユーザーとの信頼関係を続けるために縦開きを選んだとした。
D5000の液晶モニタは、裏返して収納できる。液晶面を保護し、傷つける心配がないように配慮したもの。よく見ると、液晶モニタの背面は、角が斜めに切り落とされているのが分かる。「デザイン的にまとめたいのもあるが、バッグにいれたときにひっかけるのを防ぐために出っ張りを減らした」と明かした。
また、液晶モニタを開くと、アーチ型の模様が見える。このアーチは、液晶の傷を目立たなくする意味があるという。そういった細かいところにも配慮し、デジタルカメラになってもニコンが作るものを長く使ってもらいたいと話す。
90年以上に渡る歴史を持つ、ニコンが守ってきたものは「クオリティと信頼」だ。「鬼の品質管理」とニコン自らが評する落下試験や温度試験をクリアする製品が求められるという。
写真や半導体製造、半導体検査は、極限状態でも一瞬を逃さない信頼性が求められる商品だ。「安心して使えることが絶対条件で、期待を超えて、期待に応える企業でありたい。ニコンのカメラは“二度と来ない”“特別な一瞬”のために存在する。企業理念は“信頼と創造”」という。
「いいものを作って、買っていただいた後もお客様に大切にしていただきたい。世間では、のんびりした会社といわれているが、信頼性が求められる商品を扱っている自覚とプライドをもっている」と田澤氏は説明した。
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