情報通信研究機構(NICT、田中栄一理事長代行)は6月13日、日常生活支援 ロボット分野で、対話と行動を学習するロボットの知能化技術の開発に世界で 初めて成功したと発表した。
ロボットが幼児の発達過程と同じように、人間とのやり取りを通して利用者 の意図や状況を適切に理解するコミュニケーション能力を学習することが可能 となった。実用化すれば、これまで障壁とされてきた生活環境への言語処理適 応問題が解決し、日常生活支援ロボットに不可欠な、利用者の生活空間や習慣 に応じた自然で効果的なコミュニケーションを実現できる。さらに、音声対話 インターフェイス分野の新たな市場の創出も見込める。
日常生活支援ロボットの研究開発は、世界的に日本がリードしているが、ロ ボットの対話機能に関しては、設計者によって与えられた固定言語知識に基づ く言語処理技術を採用しているため、ロボット自身が利用者ごとに異なる状況 に応じた発話の意味を適切に理解することができなかった。
今回の研究では、あらかじめ言語知識を与えるのではなく、利用者の状況に 合った対話と行動の言語能力を、ロボット自身が音声・画像・動作によるコミ ュニケーションを通して学習する技術を開発。従来の言語学習型ロボットが名 詞のみを用いた学習だったのに比べ、行動の学習や、名詞に加えて動詞や文法 も学習できるようになった。さらに、言語的知識や行動に関する非言語的知識、 実世界知識などさまざまな知識を関連付ける方法も考案し、状況に応じて利用 者の意図を適切に推定できるようにした。
これにより、人間とのコミュニケーションを通して、その場で数十個の単語 と単純な文法などを学習し、利用者と対話することができる。今後、「いつも のかばんを持ってきて」などの発話に対して適切に行動したり、気が利いたタ イミングで「雨が降りそうだから傘を持って出かけた方がいいですよ」などと 教えてくれる機能の付加も見込めるという。NICTでは、より日常的な生活に近 い環境で、実用的な知識の学習機能・性能の評価・検証に取り組む。
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