Appleは、リビングルームのデジタル化で革命を起こしたいのだろうが、革命とまではいかない段階で妥協する必要があるのかもしれない。
「Macworld Conference & Expo」で「iPhone」の熱狂の陰に埋もれた「Apple TV」は、「Mac Mini」とワイヤレスルータとセットトップボックスの中間といったような製品で、これを利用すると、カウチポテト族は大画面テレビとMacやWindows PCを接続できる。2006年9月に初めて紹介されたApple TVの出荷は、2007年1月のMacworldで同社の最高経営責任者(CEO)Steve Jobs氏が語った日程よりも遅れている。だがまもなく、おそらくは3月12日の週にも、市場に登場する見込みだ。同製品がテレビという「広大な荒地」に与える衝撃については、アナリストとマックファンの間でいつものように議論が展開されている。
Appleの意図は、明らかなように思える。同社はこれによって、どのようにしてテレビとインターネットを結びつければよいか、どうすれば映像のダウンロードが音楽のダウンロードと同じくらい普及するか、を見極めたいのだろう。Appleの最高財務責任者(CFO)Peter Oppenheimer氏は、米国時間3月5日〜8日に行われた「Morgan Stanley Technology Conference」でのプレゼンテーションで、「われわれはApple TVによって、デジタルなライフスタイルをワイヤレスでシームレスに楽しむための、優れた新手法を人々に提供できると考えている」と語った。
しかし、Apple TVがたった一晩で成功するなどと考えてはいけない。数多くの企業が何年も前から、同じゴールを目指しながら、技術とコンテンツの問題のために苦闘を続けているのだ。多くの技術オタクは、YouTubeやJoostなどの企業によって、インターネット上の無料動画コンテンツが爆発的に増加する状況に興奮している。しかし大部分の人は、いまなお「Lost」や「The Office」、あるいはメジャーリーグベースボールなどの番組を、オンエアの当日にテレビで視聴している。彼らは、番組がどのような方法でテレビの画面に届いているかなどということは考えない。
したがって現状では、リビングルームにまずケーブルテレビ用のセットトップボックスがあり、それと一緒におそらく「TiVo」などのデジタルビデオレコーダーが置かれている。リビングルーム向けのデザインを採用した静音PCも売られているが、娯楽コンテンツの中心としての普及は遅々として進んでいない。また、旧式PCと接続するためのワイヤレスアダプタも、入手が困難なうえ、使用も難しい場合がある。
Appleはリビングルーム向けに新しいPC一式を購入させるのではなく、価格を299ドルに設定し、iTunes Storeで購入できる数々のテレビ番組と映画を売り込んでいる。しかし、アナリストによると、少なくとも最初の登場の段階では、リビングルームにすっかり陣取った機器類にApple TVが割って入る見込みはないという。
ケーブルテレビ会社や衛星放送会社は、提携のセットトップボックス会社とともに、オンデマンドのテレビ番組やペイパービュー方式の映画を消費者に届けるべくすでに多額の投資を行っている。大部分のテレビ番組や試合をオンエア時に視聴したいとすれば、これから先もApple TVのほかにこうしたセットトップボックスが1つ必要になる。また、アナリストによると、世間が視聴に関心をもっていることが明確な、高解像度コンテンツの配信において、現時点では、Apple TVとインターネットの組み合わせは最善の方法ではないという。
In-StatのアナリストMichelle Abraham氏は、近い将来「有料テレビへの加入を取りやめてインターネット番組へ移ることを人々が受け入れるとは思えない」と話す。
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