松下電器産業は今秋、読書用電子端末の「ΣBook(シグマブック)」を販売する。端末の価格は3万円台とやや高価な電子端末を、松下電器は一風変わった戦略で販売する。それは、「書店でしか販売しない」という方法だ。
ΣBookはA5サイズの見開き型ディスプレイを搭載した読書専用の端末だ。単3アルカリ電池2本で3〜6カ月連続使用できるという超低消費電力設計が特徴。コンテンツは全てSD-CPRMという著作権保護機能に対応したSDカードに保存・再生される。
松下電器産業パナソニックシステムソリューションズ社 eソリューション本部 eシステム開発グループ グループマネージャーの早川芳宏氏によると、ΣBookは紙の本の流通がそのまま踏襲され、書店で販売されるのだという。電子端末は家電量販店などで売られることが多いが、「量販店などは全く使わない」(早川氏)
書店を利用するのは、書籍コンテンツを販売する上で、強力な販売経路であるからだと早川氏は説明する。「ΣBookは誰もが買う商品だとは思っていない。週に本を3〜4冊も買うようなヘビーユーザーがターゲットだ」(早川氏)。さらに「本を買いたければ、本屋に行くという単純な発想から来ている。特に出張の時や休日などでは、ふらっと本屋に飛びこんでしまうものだ」(早川氏)
書籍コンテンツは、書店もしくはパソコンからダウンロードして購入する。書店の場合、専用端末が店頭に置かれ、SDカードにダウンロードする。SDカードの形で出版することも検討しているという。事業開始時には約5000点のコンテンツが用意される予定だ。
端末の価格は3万円台になる予定。「開発側としては10万円くらいで売りたかった」(早川氏)というが、消費者から見ると3万円台でも高いと思えるだろう。実際早川氏の元にも「1万円以下にしてくれ」という声が多く集まるそうだ。
そこで松下電器では、海外でも販売することでスケールメリットを出し、価格を抑える方針だ。特に松下電器は中国をターゲットに据えている。中国では現在、山林の伐採による砂漠化が問題になっており、国家プロジェクトとして教科書の電子化が進められているのだという。松下電器はすでに電子書籍事業に関して北京大学と提携を結んだといい、「教育分野からΣBookを導入していきたい」(早川氏)とした。
世界中の文字を表示可能にするために、ΣBookの画面の表示にはフォントを使わず、全てイメージを利用する。文字検索ができないというデメリットがあるが、早川氏は「我々は本を開発した。本に検索機能はない。だから、ΣBookにも検索機能はつかない」と意に介さない。「機能はいくらでもつけることができるが、その分操作は難しくなる。松下ではノンPCで世界を作ろうという考え方があり、マニュアルなしで誰でも使えるものを作っていく」(早川氏)と、松下電器の伝統を受け継いだ製品であることも強調した。
ただし販売目標台数については、「週に4冊も本を買うような顧客は日本に1000万人いるかいないかだろう。そのうちほとんどの人は紙で読むだろうから、1割が電子書籍を利用すると考えても、最大100万台といったところではないか」(早川氏)と簡単な市場予測を述べるにとどめた。
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