東京大学教授の坂村健氏が率いるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所は4月27日、サイコロ並みの大きさのアクティブ型RFIDタグ(アクティブタグ)を開発したと発表した。名称は「Dice(ダイス)」。年内にフィールド実験を行い、早期の商用化を目指す。
アクティブタグとは電池を備えたRFIDタグのことで、電池を持たないパッシブタグに比べて長距離の通信ができる点が特徴だ。ただし電池を搭載する分だけ大型化するほか、価格はパッシブタグよりも高くなる。
Diceは無線通信回路にコイン電池やセンサーを組み込んだもので、大きさは15mm角となっている。この大きさは「世界最小」(坂村氏)といい、同研究所がこれまで開発していたアクティブタグに比べて大きさはほぼ半分、連続稼働時間はほぼ倍になっているという。
アクティブタグの「Dice」(中央)。前モデル(左)に比べて大きさは約半分となっており、サイコロ並みの大きさとなっている |
電波帯は315MHz帯を利用する。通信距離はアンテナの長さにより異なるが、30cm程度の銅線アンテナをつけた場合、10m程度の距離で双方向通信ができる。また、電源制御方式を改良して消費電力を大幅に抑えており、5分間隔で通信する場合であれば、コイン電池1個で2年3カ月間ほど連続稼動する。暗号アルゴリズムの1つである「DES」をサポートしており、通信を暗号化できる。
坂村氏によれば、Diceは倉庫などでの在庫管理やセキュリティ分野で使われることを想定しているという。RFIDの受信機1個で同時に1000個のDiceを識別できるため、即座に在庫状況を把握できるようになる。
同日開催された説明会の会場では、セキュリティ分野での活用を想定したデモが行われた。荷物の配送中に第三者がその荷物を開けたかどうかを把握できるというものだ。まず、荷物を入れたトランクにDiceとパッシブタグをとり付ける。トランクが開けられるとDiceのセンサーが感知し、「トランクが開いた」という情報をサーバ側に送る。荷物を受け取った人がトランクにつけられたパッシブタグをRFIDタグリーダーで読み取ると、リーダーがサーバと交信し、このトランクが1度開けられたものであることを表示する。これにより、荷物が配送途中で誰かに開けられたことがわかるわけだ。坂村氏によれば、「テロ対策などの面で、特に米国でこういった用途へのニーズは高い」とのことだ。
同研究所ではDiceを使った実証実験を年内にも行い、早期の商用化を目指す。商用化時のDiceの価格は「搭載する電池やセンサーの種類にもよるが、量産化すれば1個あたり数百円の下のほうになるだろう」(坂村氏)としている。
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