愛・地球博(愛知万博)で数多くの企業が展示を行い、注目を集めているホームロボット。ソニーやトヨタ自動車、本田技研工業などの大手企業から大学の研究所まで、さまざまな企業・団体が研究開発を行っている。しかしビジネス規模となるとまだまだ小さいのが現状だ。
ホームロボット市場を立ち上げ、拡大していくにはどのような取り組みが必要なのか。電子情報技術産業協会(JEITA)デジタル家電部会が4月11日に都内で開催したセミナー「JEITAデジタル家電セミナー2005 −デジタル家電最前線動向・・・展望と課題−」において、首都大学東京システムデザイン学部ヒューマンメカトロニクスシステムコース教授の谷江和雄氏が講演した。
富士キメラ総研が2004年11月に発表したレポートでは、エンターテインメントや介護、セキュリティなどのホームロボット市場は2004年が70億円、2005年は80億円程度だが、2010年には最大で約550億円規模になるという。高齢化が進む中、介護分野やこれまで人間が行っていた作業分野で機械によるサポートが必要になるからだ。
ホームロボットは多くの企業や研究機関が研究開発を行っており、試作品のほか製品化されたものも出てきている。しかし、大ヒットと呼べるような製品はこれまでソニーのAIBOなどしかない。谷江氏は「技術はあるが、製品がない状態だ」と嘆く。
なぜホームロボットを事業化するのは難しいのか。谷江氏は、ホームロボットはこれまで人間がやっていたことを機械で置き換えるものであり、新たな市場を立ち上げなければいけない点に難しさがあると話す。これまでにないものをビジネスとして確立させるためには、何よりもまず本当にロボットを必要とするユーザーを見つけ、そのニーズをきちんと拾い上げることが必要だ。しかも迅速に妥当な価格で製品化する必要がある。
そしてこのために必要なのが、ロボット技術のモジュール化だと谷江氏は言う。現在、ロボットの開発はモーターや視覚センサ、アームなどの部品の開発を1企業が自前で行っており、組み込みソフトウェアも社内で開発している。これを複数の企業が開発した部品を組み合わせるようにすれば、開発効率が高まるというのだ。
ただし問題は、各社が独自開発したソフトウェアをどう連携させるかという点だ。谷江氏は、ロボットの各部品が連携できるようなミドルウェアを開発し、標準化することで、ロボット部品のコンポーネント化が可能になると指摘し、動作制御ソフトやOSだけでなく、ミドルウェアを含めた組み込みコンピュータが今後の開発課題だとした。
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