先月ラスベガスでConsumer Electronics Show(CES)が開催された際、ソニー米国法人の幹部らは5つ星のレストランで豪華な食事を楽しみ、自社のビジネスの2桁成長に祝杯をあげた。彼らはこの時、この利益が業績のぱっとしない全社の命運を良い方向へと導いてくれるように願っていた。
しかし、ソニーが数週間後に四半期決算を発表した時には、エレクトロニクス分野のブームだけでは、ほかのビジネスの損失を相殺できないことが明らかになった。同社の経営陣にとって、この利益の格差は、同社が10年近く前から温めてきたコンバージェンス戦略を急いで進める必要性があることを強調するものとなった。この戦略は、ますます競争が激化するエレクトロニクス市場で松下電器産業(Panasonic)やSamsung Electronics、Royal Philips Electronicsを打ち負かすために、映画やゲームといった自社のソフトウェアを自社でつくるハードウェアで利用できるようにする、というものだ。
Sony Corporation of AmericaのCEO(最高経営責任者)でソニー本体の副会長も務めるHoward Stringerは、「コンテンツのないハードウェアは鉄くずに過ぎない」とCESの記者会見で語った。
Stringerは、ソニーではエレクトロニクスとエンターテイメントの両部門が長年の確執を乗り越えて共同歩調を取るようになるなど、コンバージェンスに向けた進展がある、との楽観的な見方を示した。同氏はCNET News.comとのインタビューのなかで、「今は社内の協力体制が確実に整った。ハードウェア部門とコンテンツ部門が互いに相手の抱える問題を理解するようになり、いくつかの問題を解決できる可能性が高まっている」と語った。
ソニー内部では、デジタル著作権管理をめぐって数年間続いたグループ間の内紛が収まり、ついにこのコンバージェンス戦略を奉じる献身的な信者が現れ始めている。iPodとiTunesによるApple Computerの成功がソニーに重い腰を上げさせた、という部分もあるかもしれないが、この取り組みに賭ける同社の信念は本物だ、とStringerは述べた。
ソニーは、3月24日に米国でPlayStation Portable(PSP)を発売し、市場の反応を探ることになる。249ドルで売り出されるPSPの最初の100万台には、同社独自のUniversal Media Disc(UMD)に収録された映画「Spider-Man 2」がバンドルされる。単体で販売してもヒットする映画を携帯ゲーム機にバンドルすることは、映画や音楽、ビデオゲームを配信するオンラインサービスの早期立ち上げにも役立つはずだ。
高品質の画面を搭載するPSPは、理想的なビデオプレイヤーとなるだろう。そして、北米でのリリースを前にこの携帯ゲーム機が話題になれば、それだけ独自に成功を狙う各サービスにも役立つことになる。しかしソニーは、PSPブランドを冠したコンテンツ配信サービスの準備が進んでいるという説を否定した。
調査会社Envisioneering Groupのアナリスト、Richard Dohertyは、「話題性を考えれば、同社はiPodに近いものに立ち返る必要があり、その点ではPSPがまさにうってつけといえるかもしれない。この携帯ゲーム機に優れたサービスを結びつけることが、同社の復活に極めて重要な役割を担う可能性がある。PSPの吸引力は素晴らしく、Connectもようやく動き出せるようになる」と語った。
ソニーは、コンテンツとエレクトロニクス技術の統合を前進させる一方で、まもなく買収が完了するMGMのすべての作品を、次世代DVDフォーマットのBlu-ray Discに記録する計画などを進めている。Connectサービスは、全社レベルの取り組みの最も顕著な例といえるだろう。Connectは現在、デジタル音楽配信サービスを展開しているが、同社の計画では今後3年以内に映画やビデオゲームなど、すべてを網羅したコンテンツサービスに発展することになっている。
Sony Corporation of AmericaのCTO(最高技術責任者)、Phil Wiserは、「われわれは、Connectの品質向上と規模の拡大を進めている。全社レベルで作業グループを形成し、これを次の段階に持っていくことが社内全体で明確な優先事項となっている。Connectは極めて重要であり、ソニー全体がその点を理解し、支持している」と語った。
Connectはこれまで、業界イベントなどの限られた場所でしか宣伝されてこなかったが、ソニーは今年いっぱいマーケティングの取り組みを強化し、同サービスの普及に力を入れていくことを計画している。
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