通信とコンピューティングの融合、そして進化するデジタル化で何が起こるのか。米Intel 上席副社長兼CTOのパット・ゲルシンガー氏は22日、WPC EXPO 2004にて基調講演を行い、「人々の楽しみ方、学習の仕方、コミュニケーションの方法が変化し、いつでもどこでもあらゆる機器でコンテンツを楽しめることはもちろん、ライフスタイル以外の分野に貢献することも可能となる」と述べた。
ゲルシンガー氏は、Intelがデジタルホームの実現に向けて貢献することのひとつとして、Digital Living Network Alliance(DLNA)での活動について説明した。DLNAは2003年6月に設立されたワーキンググループで、デジタル時代の相互接続性を実現させるための標準化活動を行っている。家電やモバイル、PCの各業界から170社以上が集結し、2004年6月には技術的な製品設計ガイドラインとなる「ホーム・ネットワーク・デバイス・インターオペラビリティ・ガイドラインver.1.0」をリリースした。このガイドラインに基づいた製品は「2004年第4四半期には登場する予定だ」(ゲルシンガー氏)という。
米Intel 上席副社長兼CTO パット・ゲルシンガー氏 |
さらにゲルシンガー氏は、家庭内で同じコンテンツがネットワークを通じてさまざまなデバイスで再生可能となるデモを行い、「家庭内でコンテンツを安全に配信するためのプロトコルDTCP/IPで著作権保護も可能になる」とした。DTCP/IPはIntelが技術策定に貢献した技術で、デジタル家電で相互接続性を確保するための開発ガイドラインとして同社が推進している。
家庭内ネットワークが実現したデジタルホームの先にあるものは何なのか。ゲルシンガー氏は、このようなネットワークを他の分野でも実現したいと述べる。その例として同氏が挙げたのは、ヘルスケア分野だ。「ヘルスケアは巨大産業であるにもかかわらず、ITが浸透していない」とゲルシンガー氏。特に、特定地域への人口集中や、主に先進国での高齢化などで医療システムに負担がかかるなか、ネットワークを利用した新たなシステムを提供することができるとして、お年寄りが杖を使った記録が遠くに住む家族に通知されるようなシステムの例などをビデオで紹介した。「Intelでは、PCがヘルスケアのプラットフォームとなることをめざしている」(ゲルシンガー氏)
その先には何があるのだろうか。これ以上高パフォーマンスなCPUのニーズはないのではないか、またさらなる技術革新は困難ではないのか、といった疑問もあるが、ゲルシンガー氏は「未来を予測する最善の方法は未来を創り出すこと」というアラン・ケイ氏の言葉を引用し、「われわれも未来にチャンスがあると信じて、自ら未来を創るべく、研究開発を続ける」という。
ゲルシンガー氏は、米国の放送メディアコンテンツのデータ量が1万4893テラバイト、全世界のフィルムコンテンツ量が42万254テラバイト存在するといった現状を述べたうえで、テラ時代の幕開けを告げ、それだけのデータを処理するコンピューティング性能が今後も必要とされると説明する。そのなかで同社が提唱するのは、データのRMS(Recognition:認識、Mining:抽出、Synthesize:合成)を実現するアーキテクチャだ。「テラ時代では、この3つを同時に処理できるテラフロップスの処理能力が必要となる。技術革新は今後も続き、スーパーコンピュータ・オン・チップが実現するだろう。つまり、PCでスーパーコンピュータレベルのことができるようになる。これでコンピューティングの世界は新たな変貌を遂げる」(ゲルシンガー氏)
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