10月22日、東京ビッグサイトで開催されているWPC EXPO 2004において、「携帯機器向け燃料電池の姿が見えた」と題したセミナーが開催された。会場にはKDDI 技術開発本部 開発推進部 次長の沼田憲雄氏が登場し、「携帯電話事業者が語る燃料電池への期待」と題した講演を行った。
KDDIは東芝と日立製作所の2社と、携帯電話機向け燃料電池の共同開発契約を結んでいる。10月初旬に開催されたCEATEC JAPAN 2004やWPC EXPO 2004では、充電器タイプのモックアップを展示した。
東芝のモックアップ |
日立製作所のモックアップ。右は燃料カートリッジ |
KDDIが燃料電池に注目するのは、リチウムイオン電池だけでは携帯電話の高機能化に伴って増大する消費電力を賄えなくなるからだ。ネプロジャパンの調査によれば、現在でも約8割の人が電池切れで困ったことがあり、半分以上の人が携帯電話の充電を毎日行っているという。今後、地上デジタル放送を受信する端末が登場すれば、2時間程度の視聴で電池がなくなってしまう可能性がある。
携帯機器用の燃料電池のエネルギー密度は1000Wh/kg程度と見られており、理論上はリチウムイオン電池の10倍程度になる。また、メタノールをつぎ足せばすぐ使えるため、充電時間がいらないという利点もある。
事業者の立場から見ると、燃料電池は他の発電機に比べて環境に優しいという点も魅力だと沼田氏は言う。化学反応で生じるのは少量の水と二酸化炭素だけで、ニッカド電池などに比べて有害物質も少ない。このため、KDDIでは携帯電話の基地局にも燃料電池を使えないかと検討しているという。「停電時バッテリーや定常時電源の代替として利用できるのではないか」(沼田氏)
ただし、燃料電池の実用化にはいくつかの課題がある。1つは技術的な問題で、メタノールの濃度や触媒となる白金の供給量、電解質膜の性能などに課題がある。2つめは商品化に関するもので、寿命などの耐久性やコスト、誤飲対策などの安全性の問題が挙げられるという。
そしてもう1つが規制の問題だ。現在は、消防法や毒物劇薬取締法によってメタノールなどの販売は規制されている。これでは、カートリッジを買える場所が限定されてしまい、利便性が大きく損なわれてしまう。また、航空機内への燃料の持ち込みは航空法施行規則で制限されているため、出張や旅行の際に電話機を持って行くことができなくなる。KDDIはメーカーなどと共同で政府や関係機関に働きかけを行っており、順調に進めば2007年ごろに規制が緩和される見通しだ。
燃料やカートリッジの標準化については、メーカーとの共同開発という形をとることで仕様決定に参加し、周辺仕様の標準化を図る考え。東芝と日立製作所の試作機はau共通充電器仕様に準拠させたといい、コネクタを統一することで充電器メーカーと端末メーカーが異なる場合でも利用できるようにする方針だ。
2005年度には燃料電池内蔵型の試作機も登場する予定。実際の製品化については、「メーカーが良いと思う方式を採用してもらう。部品などを統一させる考えはない」(沼田氏)として、メーカーの意向を尊重するとしている。
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