セイコーエプソンは8月18日、自律飛行が可能な小型飛行ロボット「μFR-II」を開発したと発表した。重さは本体のみで8.6g、電池を含めると12.3g。飛行ロボットとしては「世界最軽量」(同社)という(飛行実験の様子は関連記事に掲載)。
エプソンは時計開発で培った精密技術を生かし、体積1ccの「ムッシュ」などの小型ロボットの開発、販売を行ってきた。ムッシュは世界最小のマイクロロボットとしてギネスブックにも登録されているという。
μFR-IIの前身となるμFRは昨年11月に発表されたが、電池を搭載していなかったため、電源ケーブルによって飛行範囲が制限されていた。μFR-IIでは内部設計を全面的に見直し、軽量化と揚力を向上させて電池を内蔵させることに成功した。
具体的には従来の5分の1の大きさのジャイロセンサを独自開発したほか、同社の32ビットRISCマイコン「S1C33Family」など2つのCPUを高密度実装することで軽量化を図った。揚力の向上はモーターのパワーアップ等によって実現したもので、最大揚力は17gという。
Bluetoothによる無線通信ユニットを搭載し、制御サーバを通じて手動で操作する。上下左右に飛行できるほか、空中で停止するホバリングも可能だ。プログラミングされた軌跡にもとづいて、自律飛行もできるという。現在は離陸のみを手動で行い、一定の位置にきたところで自律飛行に移すという実験を行っている段階だ。
大きさは直径13.6cm、高さ8.5cm。電源は4.2Vで消費電力は3.5W。部品点数は563個にのぼる。飛行可能時間は約3分。CMOSカメラを搭載し、撮影した画像をモニターに転送することも可能だ。
セイコーエプソン 研究開発本部 開発企画知財推進部 課長の宮澤修氏は、μFR-IIについて「災害現場や宇宙など、人が行けないような場所でも情報を取ってくることができる」と期待を寄せる。すでにおもちゃメーカーなどが興味を示しているというが、「(災害現場などで活躍できることに)研究する意味がある。μFR-IIでしかできないようなことをやっていきたい」とした。
今後の課題として宮澤氏が挙げるのは、実用的な飛行能力だ。現在では風の影響を受けやすく、同日行われた飛行実験でもエアコンの風に煽られて思うように飛行が制御できない状態となった。また、Bluetoothの電波が途切れると自動的に止まって落ちる設計になっているため、無線の感度なども問題となりそうだ。
今回発表された製品は試作機で、現在のところ商品化の予定はないという。今後はさらに軽量化を図り、トンボと同じ程度の重さである3g程度にすることで飛行時間を伸ばしたいとしている。
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