NECエレクトロニクスとTransmetaは3月25日、共同で記者会見を開催し、戦略的協業で合意に達したと発表した。NECエレクトロニクスは昨年12月にTransmetaの公募普通株式を取得したとしており、今回の合意でTransmetaの低消費電力半導体開発におけるコア技術LongRun2 Technologiesのライセンス提供を受ける。NECエレクトロニクスは2005年以降に展開される90、65、45nm世代の半導体開発において同技術を採用するという。
NECエレクトロニクス取締役副社長 橋本浩一氏(左)と、Transmeta CEO マシュー・ペリー氏 |
LongRun2は、Transmetaの低電力x86互換プロセッサEfficionに実装されているもので、トランジスタからのリーク電流(電流漏れ)を解決するもの。リーク電流は、総チップ電力を圧迫し、低電力待機動作の妨げとなるおそれがあるとされている。半導体の微細化が90nmを超えるとリーク電流問題は徐々に悪化すると予測されており、この問題を解決すべく業界内ではさまざまな取り組みが行われている。
NECエレクトロニクス取締役副社長の橋本浩一氏によると、同社でもこれまでに並列プロセッサ技術やマルチゲート酸化膜厚、マルチしきい値電圧化などの技術開発で低消費電力化に取り組んできたが、「LongRun2はこれらの技術を補完するものだ」と語る。同技術を採用することにより「消費電力は最大6分の1になる」と橋本氏。今後、携帯電話やモバイル製品を中心に、低消費電力化が必要な分野に向けた製品展開を行っていくとしている。
Transmetaにとって、LongRun2をライセンス提供するのはNECエレクトロニクスが初となるが、Transmeta最高経営責任者(CEO)のマシュー・ペリー氏は「今後ライセンス事業をさらに拡大する予定だ」としている。NECエレクトロニクスとの契約に至った理由について、同氏は「TransmetaもNECエレクトロニクスも、低消費電力化技術に関しては業界リーダーだ。両社が協力することで、低消費電力分野でより戦略的な取り組みができる」と述べた。
今後のライセンス事業の規模や見通しについては明らかにされなかったが、同社はすでにMidori Linuxブランドを中国市場に提供したり、旧プロセッサ技術のライセンスを研究機関に提供するといったライセンス提供を行っており、今後はコアな技術のライセンス提供を積極的に行うという。ペリー氏によると、すでに同社は数社と商談を持った模様。
なお、Transmetaは90nm版Efficionの生産を富士通に委託するとしているが、富士通にLongRun2をライセンス提供する予定があるのかとの問いに対しては、「富士通とは密接な関係を築いているが、今の段階でライセンス提供に関してコメントできることはない。(富士通に限らず)今後もライセンス提供のパートナーは積極的に探す予定だ」(ペリー氏)と述べるにとどまった。
一方、NECエレクトロニクスが取得したというTransmetaの株式は、「(正確な割合はいえないが)Transmetaが発行する株式の2%以下」(NECエレクトロニクス執行役員 山口純史氏)だという。株式取得の理由について、副社長の橋本氏は「LongRun2のライセンスを取得するという一時的な関係のみならず、今後の長期的なパートナーシップを視野に入れたものだ」と説明する。逆にTransmetaがNECエレクトロニクスの株式を取得することはあるのかとの問いにTransmeta CEOのペリー氏は「いまのところコメントはできない」とした。
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