ソニーは1月8日、音楽や動画、テキストファイルなどのPCデータを扱える新たなMD規格、Hi-MDを発表した。ディスクの大きさや形状は現行のMDとほぼ同じで、Hi-MD機器はすべてMDの再生が可能。6月には1GBの容量を持つ専用ディスクが700円程度で発売されるほか、対応機器4機種も市場に投入される。この新規格の投入により、ソニーはMD市場の大幅な拡大を狙う。
Hi-MD規格は新たな信号処理技術を採用し、大容量の記録を可能にした。現行のMD規格では80分ディスクの容量は177MBだが、Hi-MD規格方式に初期化すると約2倍の305MBへと拡大できるという。さらに、DVD並みの高密度を実現したHi-MD規格専用の1GBディスクであれば、最大約45時間の音楽の録音が可能になる。Hi-MDではMDと同じ波長のレーザーを利用しているため、機器の製造コストなどには大きな影響がないという。
同規格のもう1つの特徴は、音楽以外のデータを扱えるようになった点だ。Windowsで使われているFATファイルシステムを採用し、動画やテキストデータも扱えるようになった。「MDの世界を広げるために規制を取り除いた」(ソニー 業務執行役員 ネットワークCE開発研究所 所長の吉田忠雄氏)という。また、USB規格のマスストレージクラスに対応したことで、PCと接続すると外部ストレージ機器として認識されるため、大容量のリムーバブルメディアとして利用できるとしている。
その他、著作権保護技術として、メモリースティックなどで使われているOpenMGとMagicGateを採用し、デジタルコンテンツの不正コピーを防止している。音声圧縮技術としてはMP3より高圧縮率、高音質のATRAC3plusを採用した。さらに、音声を圧縮せずに記録するリニアPCN録音にもMDでは初めて対応。この方式を使った場合には1GBディスクに1時間34分の録音ができる。
「MDの市場規模を1ケタ拡大したい」
PCからのUSB記録と再生に特化したHi-MDウォークマン「MZ-NH3D」 | |
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ソニーは1979年に発売したウォークマンでポータブルオーディオプレーヤーの市場を確立した企業だ。MDの規格を決定したのも同社で、1992年に商品化してから2003年末までのMD機器およびメディアの累計出荷数は、それぞれ約8000万台、約11億枚にのぼる。
しかし近年は、より小型で大容量なフラッシュメモリ内蔵オーディオプレーヤーやAppleのiPodなどのHDD搭載プレーヤーに人気が集まっている。また、PCからCDに音楽をコピーできるようになったこともあり、MDの市場はここ2、3年横ばいで推移しているという。
今回の新しいMD規格の投入により、ソニーではMDの市場を一気に拡大する考えだ。「CD-Rの市場規模は世界全体で約60億枚といわれている。MDの規模は約1億5000万枚だが、これを1桁拡大したい」(吉田氏)
だが、ソニーはHi-MDに競合する製品を社内に抱えている。メモリースティックやフラッシュメモリを使った、ネットウォークマンと呼ぶポータブルオーディオプレーヤーだ。この点について吉田氏は、「(同じ容量を比べた場合)MDはフラッシュメモリに比べて値段が2桁安い」とその利点を語る。たとえば512MBのフラッシュメモリを内蔵したネットウォークマンは、ソニーが運営している販売サイトであるソニースタイルで4万4800円で売られている。しかし、今回発表された1GBのHi-MD専用ディスクは700円程度で販売されるという。
シャープ、ケンウッド、オンキヨーなどが採用を検討
Hi-MDデスクトップオーディオ“サウンドゲート”「LAM-X1」 | |
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ソニーは他社にもHi-MD規格の採用を呼びかけていく考えだ。現在ソニーからMDのライセンスを受けている企業は80社ほどあるが、シャープ、ケンウッド、オンキヨーなど数社が採用を検討している。
ソニーが6月に発売するHi-MD対応機器は、Hi-MDウォークマン3機種とHi-MDデスクトップオーディオ1機種。いずれもオープン価格だが、市場想定価格はHi-MDウォークマンの最上位機種「MZ-NH1」が4万5000円、PCからのUSB記録と再生に特化した「MZ-NH3D」が3万5000円、再生専用モデル「MZ-EH1」が3万円、オーディオセットの“サウンドゲート”「LAM-X1」が6万円という。それぞれの月産台数は「MZ-NH1」が3万台、「MZ-NH3D」「MZ-EH1」が2万台、「LAM-X1」が1万台としている。
発表会の席では、コンセプトモデルとしてHi-MD対応のデジタルカメラや映像再生端末、サングラス型の映像視聴機器などが展示された。これらの商品化時期については未定という。
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