NECエレクトロニクスと英ARMは10月20日、携帯端末機器やカーナビ、デジタル家電などを対象とした次世代プロセッサの開発に向けて提携したと発表した。両社は共同で次世代並列CPUコアの開発やマーケティングを行うと共に、同コア用のソフトウェアも開発していく。
両社が開発を進めるのは、複数のプロセッサを1つのプロセッサのように動作させる対称型マルチプロセッサという技術。複数のプロセッサを並列処理することで性能を高めながらも、それぞれのプロセッサの動作周波数を抑えることで低消費電力化を実現する。具体的には3〜4個のプロセッサを並列処理して2000MIPSの性能を出しながら、消費電力を4分の1から5分の1に減らすことを目指しているという。
携帯端末やデジタル家電などは、ネットワーク化や機能の複合化に伴ってプロセッサの消費電力が増加しており、問題となっている。NECエレクトロニクスでは携帯端末やカーマルチメディア、デジタル家電などの市場が2006年には3兆円規模になると予測しており、高性能、低消費電力のプロセッサに需要があると見ている。
握手を交わすNECエレクトロニクス取締役副社長の橋本浩一氏(左)と英ARM COO&Directorのチューダー・ブラウン氏(右) | |
今回両社が開発する次世代プロセッサはARM 11マイクロアーキテクチャを元に開発する。NECエレクトロニクスでは今回の提携に基づき、ARM 11ファミリに関するライセンスを受けるとともに、マルチプロセッサ技術をARMに提供する。
両社が共同開発した技術を元にした製品が登場するのは2004年末以降になる見込み。NECエレクトロニクスではARM11関連の売上高について、2007年に300億円程度の売上を見込んでいる。
なお、両社が開発したコアの設計に関する権利はARMに所属する。「まずNECエレクトロニクスと共に市場にソリューションを提供する」(英ARM COO&Directorのチューダー・ブラウン氏)というが、ARMが他のファウンドリ企業へライセンス供与する可能性もあるという。この件についてNECエレクトロニクス取締役副社長の橋本浩一氏は「弊社はライセンスで儲けるのではなく、基本的には製品を作って売ることで利益を上げていく企業。ARMが他社へライセンスするのを差し止めるようなことはしない」と語る。他のファウンドリ企業に技術が流れるのではないかという質問には、「そう簡単に真似されるような技術ではないと考えている」と強気な姿勢を見せた。
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