IDC Japanは9月9日、都内でセミナーを開催し、同社PCsシニアマーケットアナリストの新行内久美氏が世界PC市場の動向について紹介した。
新行内氏はまず、2003年第2四半期における世界の地域別PC市場について紹介した。新行内氏によると、出荷台数は回復基調に乗ったものの、金額ベースでは横這いの状態にあるという。
出荷台数で見た場合、2003年第2四半期の世界全体の成長率は対前期比プラス9.6%となったという。最も回復の遅かった日本がプラス成長に転換したほか、SARSの影響によって一時的に成長が止まっていたアジアパシフィックも再び成長軌道に乗ったため、全ての地域で成長率がプラスとなった。
一方、金額ベースで見た場合、2003年第2四半期における世界全体の成長率は対前期比0.7%のマイナスとなった。これは販売単価の下落によるところが大きいと新行内氏は分析する。「特に米国における単価の下落が激しい」(新行内氏)。その中でもノート型やタブレット型などのポータブルPC市場における単価下落率が激しいといい、米国では2年前に2200ドル程度だったものが、現在では1200ドル近くにまで下がっているという。
IDC Japan PCsシニアマーケットアナリストの新行内久美氏 | |
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単価が下落している背景として、新行内氏は、ベンダーが低価格化によってユーザーの需要を喚起しようとしている点を挙げる。ただし、ベンダー間の競争激化によって、ユーザーのニーズ以上に価格が下落している現状があるとも指摘した。
世界の中で、PCの価格が唯一高止まりしているのが日本だ。新行内氏によると、書き込み型DVDや大型LCDのついた高スペックなPCが売れていることが背景にあるという。さらに、日本で市場の半分を占めるポータブルPCの価格がもともと1800ドル程度の普及価格で売られていたことも、販売単価が変わっていない原因の1つだとした。
DellとHPの覇権争いが低価格化に拍車
続いて新行内氏は、世界におけるPCベンダーの動向について紹介した。DellとHewlett-Packard(HP)が圧倒的にシェアを握っており、両者の覇権争いがPCの低価格化に拍車をかけているという。IDC Japanの調査によると、2003年上半期におけるDellのシェアは17.3%、HPが15.9%となっており、第3位のIBMの5.9%を大きく引き離している。
ただしDellとHPの出荷国シェアを見ると、両社の戦略は大きく異なっているという。Dellの場合、全体の出荷台数のうち63%が米国市場向けとなっており、英国や日本などを足した上位6カ国が出荷台数の80%以上を占めている。一方HPの場合、同社の全出荷台数における米国の割合は42%で、上位6カ国の合計も60%程度だ。新行内氏は「米国での高いシェアがDellの世界的シェアに直接貢献しているのに対し、HPは幅広い地域カバレッジによって世界的シェアを獲得している」と分析し、両社の違いを強調した。
2003年上半期におけるベンダーの出荷台数の伸びを見ると、Dell、東芝、Acer、Legendの4社が前年比で2ケタ成長を遂げているという。逆に2ケタの減少を見せたのがソニーだ。新行内氏は「2002年夏の戦略が失敗したことが原因」と分析する。
新行内氏によると、米国ではデスクトップ用のCPUを搭載したノートPCが人気を集めたが、ソニーは他社に比べ投入が1〜2シーズン遅れたのだという。それによって大量の在庫を抱えた上に、「ソニーはデザイン性が高く、価格はあまり安くないという製品ラインナップをとっている。そのため、PCが売れるのは日本、米国、欧州くらいしかなく、他の地域に持って行くことができない」(新行内氏)とソニーの弱点を指摘した。
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