米Apple Computerは、大人気の「digital hub」ソフトウェアのうち、一部のアップグレード版を有償で提供しようとしている。同社は1月6日の週にこの計画を発表するもよう。アップグレードの無償配布に慣れているユーザーがこの方針をどう受け止めるかは疑問だ。
この計画に詳しい情報筋によると、Appleはサンフランシスコで開催される「Macworld Expo」で、「iDVD」、「iPhoto」、「iMovie」のアップグレードを有償配布すると発表する見込みだ。これらのアプリケーションは共にバンドル販売されることになる。Appleはこれまで、デジタルメディアである「i」アプリケーションのアップグレード版を無償で配布していた。
iMovieはデジタルムービー編集のソフトで、iDVDは最終製品をDVDにコピーするソフト。そしてiPhotoはデジタル画像を整理、編集、印刷するためのソフトである。情報筋によると、これら3製品を組み合わせたアップグレード版の料金は最大で50ドルとなり、「i」シリーズアプリケーション6製品すべての有償化に向けた第一歩といえるだろう。なおこの6製品は新しいMacには今まで通り無償でバンドルされる。
Appleのiアプリケーションには他に、デジタル音楽用の「iTunes」、スケジュールソフトウェア「iCal」、同期化ユーティリティの「iSync」がある。なお、Appleは2日、iCalとiSyncのアップデート版をリリースした。
Appleの広報担当者は同社のポリシーとして、未発表の製品やサービスについてのコメントを避けている。しかしこうした内容詳細については、Macworldの直前に変更される可能性もある。Macworldは、7日にAppleの最高経営責任者(CEO)スティーブ・ジョブズの基調講演とともに開幕する。
「Windowsユーザーは、Appleが期待していたほどMacに乗り換えていない。そこでAppleは、人気アプリケーションのバンドル化と、そのアプリケーションにプレミア価格を付加するという、米Microsoftのような方針をとることにしたのだ」と、米Technology Business Research(TBR)のティム・ディールは指摘する。
有償化に対する消費者の反応は、昨年と同様厳しいものになりそうだ。
ジョブズは昨夏ニューヨークで開催されたMacworldで、Appleが「.Mac」に年間100ドルもの利用料を課すと発表した。.MacはWebベースの電子メールやユーティリティなどを組み合わせたサービスで、以前は「iTools」という名の元、ユーザーは無料で利用できた。
Appleはまた、「Mac OS X」の最初の重要なアップグレードである「Jaguar」も無償提供しなかった。これによりユーザーの大多数はアップグレード版に129ドルを支払わなければならなかった。Jaguarのリリースは、OS Xの登場から1年も経っていない。.MacもJaguarも、当初は有償化に反対の声が上がったが、多くのユーザーは不本意ながら代金を支払った。昨年10月以来、およそ18万人のユーザーがiToolsの有料バージョンである.Macに登録している。
米IDCのアナリスト、ロジャー・ケイは「お決まりの憤慨の声がわき上がるだろう。それまで無償で利用できたものに料金を支払いたい人は誰もいないものだ」と述べた。
米NPD Techworldのアナリスト、スティーブン・ベーカーは、アップグレード版の課金を「興味深い戦略」だと見ている。ベーカーによると、6製品の無償配布は「Macの販売を増やし、デジタルメディアの流行の最先端に立つ」ための重要な方法だったからだ。
2年前のMacworldで、ジョブズはMacを、カメラ、ビデオ、音楽プレーヤーなどのデジタル機器を接続するハブとして位置づけた。それ以来、Appleは新しいデジタルメディア・アプリケーションや、そうしたアプリケーションのアップグレード版をリリースしてきた。IntelベースでWindows OS搭載のPCよりも優れた製品としてMacの座を確立しようとしているのだ。
なおAppleのこの動きは、Microsoftの「pay for play」ソフトウェアの出荷時期と一致する。Microsoftは1月6日の週、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で「Windows XP」向けの「Plus Digital Media Edition (DME)」をリリースする予定だ。
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