未知の世界だった印鑑業界だが、知れば知るほど面白いと中川氏は語る。「長年培われた、しかも日本だけにしかないすごい技術がたくさんあります。しかもその技術も進化しています。一方で、伝統的な歴史のある業界のせいか、なかなか世に広めるアプローチをされていなかったり、その方法を知らなかったりするので、もったいないとも思っています。印鑑は斜陽産業と言われているところもありますけど、決してそんなことはありません。やり方次第でもっと面白いことができます」(中川氏)
販売する印鑑も日々進化しクオリティを上げているという。「ひとつのわかりやすい例として、たとえばコラボ初期の頃は顔や髪の毛が輪郭線のみに近い印面のデザインだったのが、髪や顔の影を付けられるようになりました。これでぐっとキャラクターの存在感を出すことができます」(中川氏)。ただ単に線画を反映させるだけではなく、よりキャラクターが映える形での印影になるように、デザイナーとも試行錯誤を繰り返していると語る。特にコラボものについては、企画から販売まで半年ぐらい時間をかけることも多いという。
購入本数が多く、リピーターとなる購入者も多いのも、一般的な印鑑販売とは異なる痛印堂の特長とも語る。普通印鑑であれば一本だけ、しかも一生使うというぐらいのものでもあるが、コラボした作品の全種を購入する人も少なくない。「ある作品を全種購入したお客様が、別の作品でも全種購入されたうこともありました。好きな作品だから購入したという方が、痛印のこだわりやできばえを気に入って満足していただいて、そして痛印の進化を期待して次の欲しいと思ってくださったからだと考えています」(中川氏)。
「痛印堂を始めるまえに、印鑑の販売店さんなどに話をしても、何をしようとしているかわからないと。そもそも値段が付けられないと何度も言われました」(中川氏)。事業としては十分軌道に乗っている状態だが、それでも前例がないことをやっているだけに、手探りかつ試行錯誤の日々だと語る。
今後も痛印を通じて印鑑の良さを知ってもらうため、さまざまなアプローチを行っていくとしている。話題性の強いアニメやゲーム作品のコラボ痛印についても、これまでの作品に負けず劣らずの熱心なファンを持つ作品で行ったり、そのやりかたも驚きを与えるような形での展開も予定されている。
3月22日と23日に東京ビッグサイトにて行われるアニメイベント「AnimeJapan 2014」ではブースを出展。痛印の展示のほか、一級彫刻師による痛印の実演彫刻を実施予定。さらに、これまでやったことのない一風変わった痛印の新作や、痛印ではないこだわりの新作グッズの発表も行うとしている。
そして中川氏が見据える先にあるのは、世界展開だ。痛印堂設立当初からのミッションとして「痛印を世界に!」を掲げている。すでにオタクカルチャーの情報を英語で発信する「Tokyo Otaku Mode」と提携し試験的な販売を実施。アメリカやヨーロッパからの注文があり、購入者の反応も上々。海外メディアにも取り上げられたことがあるという。一般的に海外はサイン文化が強いと思われるが、そういう状況だからこそチャンスがあると中川氏は考えている。
「もともと日本文化を愛好している外国の方は多いです。そして印鑑は日本独自の文化ですし、ほかのグッズとは違って作れるのも日本だけ。さらに日本のキャラクター文化が世界中で愛されているのは、クールジャパンをうたっていることもからも明らかです。このふたつの要素を痛印は持っています。ただ痛印を世界に売るというというよりは、印鑑文化を世界に広めたい。ハンコは奥深く魅力的なものですし、その文化があることを海外に知らせて市場を広げていきたい。それが痛印堂の役割なのかなと考えています」(中川氏)。
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