SAPジャパンは、デジタルコンテンツ配信の課金請求ソリューション「SAP Consume-to-Cash」を2010年第4四半期に提供すると発表した。通信と放送の融合や、クラウドコンピューティングの浸透により拡大することが予想される新たなビジネスを念頭に、出版、テレビ、音楽、ゲームなどのメディアエンターテインメント企業、通信事業者、クラウド事業者向けの需要を狙う。
SAP Consume-to-Cashは、デジタルコンテンツ配信にかかわる課金と請求を統合的に扱うことができるプラットフォームだ。基本的には「SAP統合課金」「SAP統合請求」「SAPカスタマフィナンシャルマネジメント」の3つのソリューションで構成される。
SAP統合課金は、サービスの価格設定からリアルタイム料金計算や事業者間清算など、料金計算全般を扱う。従来このような課金ソリューションのシステム設計は非常に複雑だったが、SAP Consume-to-Cashは操作が容易なGUIを用いた「Decision Tree」方式のパラメータ設定型手法を採用。アイコン状の「ブロック」を組み合わせるようにして料金メニューの構築が可能。たとえば、現場のマーケティング担当者レベルでも容易に料金プランの設計ができる。新料金プランの導入には通常3〜6カ月かかるとされるが、これを数日〜数週間程度にまで短縮できるようにしているという。
SAP統合請求は、課金情報を受け取り、整理分析して請求書を作成する。個別契約単位に留まらず、複数の契約の一括請求や複数ユーザーをまとめる集約請求も可能。また、SAPの財務会計アプリケーションのユーザーであれば、SAP統合請求と連携させることできる。
SAPカスタマフィナンシャルマネジメントは、顧客情報管理を基に多様な支払い窓口に対応、入金管理、未収金管理、督促管理、さらには回収代行会社との連携までを担い、債権情報を包括的に管理する。
さらに、SAP Consume-to-Cashは、SAPのメディアエンターテインメント向けソリューションとの連携により、著作権の管理、印税およびロイヤリティの計算、顧客企業の購買および購読契約管理を包括的に行うデジタルコンテンツ配信プラットフォームを構築できる。同社によれば、SAP Consume-to-Cashは、全世界の幅広い業界ですでに200社以上の導入実績があるという。
SAPジャパン インダストリー戦略本部 通信・メディア産業担当部長の早川正明氏は「SAP Consume-to-Cashは、分散型のアーキテクチャを採用しているため、高いパフォーマンスと安定運用を実現している。数千万規模のユーザーに対応できるとともに、1秒間に数万トランザクションの処理が可能だ。既存の製品と比べ4倍高速で、必要なハードのスペックは1/50に下がっている」と話す。
同社は、通信やメディア業界を中心とするデジタルコンテンツの進化を機軸とする新たなビジネスの市場に照準を合わせている。なかでも、スマートフォンやタブレット型端末向けのコンテンツの流通が、「アプリケーションストア」をプラットフォームとしている点に注目しているようだ。さらに、コンテンツの利用料は、従量課金へと移行する傾向にある。「AppleがiPodと配信プラットフォームを発展させ成功したことで、他社もこれに追随している」(早川氏)状況で、同社はSAP Consume-to-Cashにより、この領域からの需要に応える意向。SAPジャパンは今後、空調などのオフィス機能や、運輸および公益事業でも従量制サービスが普及することも見込んでおり、市場がさらに拡大することを期待している。
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