課題は「枯れた技術をどう産業に生かすか」--国内第一人者が語るARの未来像

岩本有平(編集部)2009年02月27日 14時38分

 アニメ「電脳コイル」や芸者東京エンタテインメントの電脳フィギュア「ARis」の登場でも注目を集めている拡張現実(Augmented Reality:AR)をテーマにしたカンファレンス「ITproビジネス・カンファレンス『AR(拡張現実)ビジネスの最前線』」が2月26日都内にて開催された。

 基調講演には、東京大学大学院情報学環大学院情報学環教授であり、クウジット技術顧問を務める暦本純一氏が登壇。国内AR研究の第一人者でもある暦本氏は、「ARの可能性と未来」と題して自身がこれまで携わってきたAR技術を紹介しつつ、その可能性について語った。

暦本純一氏 東京大学大学院情報学環大学院情報学環教授でクウジット技術顧問を務める暦本純一氏

 暦本氏はまず、ARについて「映画『ターミネーター』やアニメ『ドラゴンボール』のスカウター、『電脳コイル』(の電脳メガネ)などSFの世界では繰り返し表現されてきたが、あくまで現実をテクノロジーによって増強・拡張する技術」と説明。現在トレンドとなっているような、現実と仮想の情報をオーバーレイする技術はARの一部にしか過ぎないと説明する。

 また、いわゆる仮想現実(Virtual Reality:VR)との区別について「Virtual Realityはコンピューターの世界で情報を閉じてしまう技術。一方でARは、現実世界を自然に見た時に(視覚以外の)情報をコンピューターが強化する、人間強化型の技術」と語る。

 ARの研究の歴史は長い。かつて1960年代には米国のコンピューター科学者Ivan Sutherland氏が「The Ultimate Display」と呼ぶヘッドマウントディスプレー(HMD)を開発。これが最初のVRやARとも言われている。その後1993年にはコロンビア大学で「KARMA」と呼ばれるARを利用したシステムが開発された。これは超音波センサーを使って、レーザープリンタの目視できない内部機構をHMDに表示し、保守をサポートするシステムだ。

 このように古くから研究されてきたARだが、その本質は、利用者の周囲の状況をコンピューターが察知し、最適な情報を提供する「Context-Aware Computing」を実現するための1つのインターフェースだと暦本氏は説明する。

 同氏はこれまでソニーコンピューターサイエンス研究所でARの研究を進めていたが、1994年にはハンドヘルト型のAR向けデバイスを開発する。「NaviCam」と名付けられたそのデバイスは、カメラと液晶モニターを組み合わせたもの。画像表示の処理などはデバイスとケーブルで接続されたワークステーションで行っていた。

「NaviCam」 1994年に発表した「NaviCam」

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