11月11日に開催されたカンファレンス「CNET Japan Innovation Conference 2008〜いよいよ本格化する動画ビジネス最前線〜」(CJIC 2008)にて、ビデオリサーチインタラクティブ(VRI)代表取締役社長の荻野欣之氏が、ウェブ動画コンテンツの利用状況と適切な効果測定について講演した。
一口に動画サイトといっても、その実態は大きく2つに分けることができるという。1つはYahoo!動画やGyaOに代表される「動画配信サイト」。そしてもう一方がYouTubeやニコニコ動画などの「動画共有サイト」である。
動画配信サイトは事業主がコンテンツ調達から権利処理、再生画質の管理などを総合的に担っている。一方の動画共有サイトでは、ユーザーがアップロードしたショートクリップ的な映像素材をメインコンテンツとする。ユーザーの意識も、映像そのものの視聴よりもコミュニティへの参加のほうが強いという側面がある。
これらの動画サイトに2007年の1年間でどれだけの人が訪れていたのだろうか。VRIの調査によれば、推定2815万人、実にインターネットユーザーの64.0%に相当するという。
この数字を日常に置き換えてみる。1日単位でみると、動画サイトへの接触者は233万人、平均滞在時間は28分35秒という規模だ。
同じくVRI調査による2008年9月のサイト別アクセス状況をみると、推定接触者1位はYouTubeで1586万人。これにYahoo!動画(516万人)、ニコニコ動画(496万人)が続く。平均滞在時間のトップはニコニコ動画(2時間38分)で、2位YouTube(1時間22分)を大きく引き離している。接触者数がYouTubeの3分の1以下のニコニコ動画が、1人あたりの滞在時間では逆にYoutubeに2倍近くの差をつけた。
総利用時間ではニコニコ動画(1286万時間)がYouTube(1311万時間)を僅差で追うという結果になった。コミュニティ要素の強い共有サイトが滞在時間を伸ばす傾向にあり、ニコニコ動画やYouTubeのほか、Google Video、AmebaVisionの4サイトで動画サイトの利用時間のうち約85%を占めた。
こうした動画コンテンツ、およびインターネットCMを測定する際に注意したいのは、これまでと同様にリーチを計るだけではメディア全体のパワーを表せないという点だと荻野氏は述べる。
従来、企業からのメッセージはPRと広告によって4マスおよびネットのメディアに伝えられ、そこからオーディエンスへと伝播していった。
しかし、いま確立されつつあるのは、メディアを含むより大きな“コミュニティ”介在型のモデルである。コミュニティの中には既存メディアと同列にブログやソーシャルネットワーキングサービスといったUGC(User Generated Contents)が並び、そこに企業から広告やPRで情報が届けられる。
コミュニティからオーディエンスへの情報伝達は必ずしも一方通行ではなく、オーディエンスからコミュニティへのフィードバックも起こり得る。ここがメディアにとって新しいビジネスチャンスとなる領域だ。
このような新しいモデルの情報伝達が確立されつつある現在、荻野氏はメディア力を正確に把握するために、「メッセージの到達(Reach)」、そしてコミュニティによる「メッセージの増幅(Amplification)」を意識すべきであると語った。
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