「自分は自動車を運転しているよりも、ウェブブラウザを使う時間の方が長い。私たちは車を買う際には何台かの車を試乗して買うものを決める。どうしてウェブブラウザには同じことができないんだろう」。
9月3日に都内で開かれたGoogle Chromeの発表会で、開発責任者のライナス・アップオン氏があるプロダクトマネージャーの談話として上記のように語った。確かにそうだ。インターネットユーザーの多くは最初に推薦されたInternet Explorerに乗り続けている。
「1つ。Googleにとってチャレンジすべきことがブラウザの世界にある。ブラウザにも“選択肢”があるんだということが、まだ一般の人たちに知られていない。ブラウザとは何ですか? と聞く人さえいる。こうした課題をGoogleが改善していきたい。Chromeを発表したことによって、ブラウザと呼ばれるものがあること、そして選択肢があることを、より多くの人に知って欲しい」(ライナス氏)
こういった考え方はウェブブラウザ「Firefox」を開発するMozillaとも共通するところがある。ライナス氏はこれまでMozillaがブラウザ分野で果たしてきた功績を評価し、「Mozillaは長年わたってブラウザを推し進めるのにとてもふさわしい仕事をしてきた。そこに関してはまったく異議はない」と述べた。
ではなぜ、その一方でMozillaの「Firefox」と競合するブラウザを開発したのだろうか。ライナス氏は次のように語る。「今後どういったブラウザが求められているか、どういったブラウザを作っていくかという点についてはエンジニアの間でさまざまなアイデアがある。Googleの意見を無理やりMozillaに押し付けるという形は取りたくないし、いろいろなアイデアが出ることで競争が生まれ、それウェブの環境を良くしていくとも考えている」。
GoogleとMozillaは8月末に検索関連の提携を3年延長したことを発表したばかり。引き続き、GoogleがMozillaの収入の大部分に貢献することになる。「MozillaとGoogleはたくさんの努力を共有し、今後もその関係は続いていく。Chromもオープンソース化されているので、オープンソースでのコミュニケーションがさらに活発化していくだろう」(ライナス氏)
ライナス氏はGoogleがブラウザを開発する意義を3つ挙げた。
収益面に触れられていないところがGoogleらしいが、「Googleのすべてのビジネスはブラウザからスタートするという意味では、Googleにとってブラウザは非常に重要だ。ただ、ブラウザを開発することによって、それをお金に換えたり、収入源にしたりはしないということを我々は強調したい」とライナス氏は述べた。
ユーザーがより快適にウェブを利用できるようになれば、それだけウェブを利用する人が増えていく、そして利用者が増えれば、最終的にGoogleを利用する人が増える。そういうサイクルこそが、GoogleがChromeから受ける恩恵になるということだ。
ところで、Chromeはウェブブラウザ市場でどれほどのシェアを獲得するのだろうか。ライナス氏は「会社として具体的な数字は発表できない」としながらも、その一方で自信を覗かせた。「Googleはいつも信じている。私たちがベストプロダクトを出し続ければ、必ずやそれは成功し、何百万人ものユーザーにお使いいただけるだろう」
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