早稲田大学デジタル・ソサエティ研究所は1月26日、東京・早稲田の早稲田大学キャンパスでシンポジウム「コンテンツ振興のための次世代制度を考える」を開催。著作権制度の在り方や新情報通信法への評価などについて、法学者や関係者らが議論を展開した。
第一部「著作権と関連制度はいかに創造社会を生み出せるか」では、現状の著作権関連制度が創造を阻害しているとの共通認識に基づき、その上で進むべきさまざまな方向性が提案された。
特に議論が集中したのは、一橋大学大学院教授の岩倉正和氏、早稲田大学大学院准教授の境真良氏が提案する「登録制度」(権利者が二次利用可否などの意思を事前に示す制度)。権利者、法学者、経済学者がそれぞれの立場から賛否を論じた。
「逆境ナイン」などの著作で知られる漫画家・島本和彦氏は「漫画ばかり描いていると他に手が回らない。代わりに戦ってくれる制度はありがたい」と賛成の意思を表明。また、東京大学先端研究センター教授・玉井克也氏は「現行の著作権制度を変えるのではなく、新たな制度を追加して複線化することには賛成」としながら、「中古書籍の販売店や漫画喫茶などから料金を徴収するなど確実なメリットがなければ登録者自体が集まらないのでは」と内容面に苦言を呈した。
これに対し、真っ向反対の意思を示したのは慶応義塾大学准教授で経済学者の田中辰雄氏。「現行制度より権利範囲の狭まる登録制度では売れている作家の登録は進まない。また、登録した作家の意思を守る仕組みとして警察などの強い取締り能力が必須となるが、それに怯えて利用を控える二次創作者が増えることも予想され、結果的に二次創作市場は萎むことになるだろう」。
法政大学准教授の白田秀彰氏は、玉井氏同様「複線化」には同調する姿勢を示したものの「内容的には賛成できない」とした。その上で「作家の権利と製作委員会などの権利を分けて制度化する」「コピーを完全フリーにした上で利用実態の多い作家・作品をユーザから投票してもらい、その割合にあわせて国が税金などからプールした金を還元する」などの私案を披露した。
漫画家・永井豪氏の権利関係を担当するダイナミックプロ・メディアプロデューサの幸森軍也氏は「登録には『早いもの勝ち』の性格があり、その判断力が問われる」と権利者の立場ならではの具体的な問題点を指摘。
一方、増加傾向にある海外などからの使用問い合わせを個別・出版社別に対応していることに触れ「コンテンツ立国を目指すのであれば、データベース的な制度が必要になるのは確か」との見解を示した。
提案者である境氏は「売れている作家や大手出版社にとっては処理対応、権利侵害対応が作業・コスト面とも軽減され、必ずしも(田中氏らの言う)非参加にはつながらない」と主張した。
YouTubeの代理弁護人として日本国内権利者と交渉を行った経験を持つ岩倉氏は「高いニーズがありながらも権利侵害が認められるのは事実。実務的なあり方を考えていくべき」との前提を置いた上で、「知財戦略本部へのパブリックコメント提出後に権利者から大きな反発を受けた。これを元に新たな展開を検討していく」との方針を示した。
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