「(子どもが有害な情報にアクセスできないように)フィルタリングを導入することには全くもって賛成だ。しかし、その仕組みや中身がどういったものなのかが、我々に伝わってこない。いきなり『来年からやります』とだけ言われても、保護者の準備ができていない」――総務省が12月27日に開催した研究会「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」第2回会合では、政府のフィルタリング加入政策に保護者が戸惑っている様子が明らかになった。
冒頭の発言をしたのは、社団法人 全国高等学校PTA連合会会長の高橋正夫氏。高校生の保護者の代表だ。政府は12月10日に、携帯電話事業者4社に対して、有害情報にアクセスできないようにするフィルタリングサービスに未成年者が原則加入するよう要望したばかり。このため、議論は携帯電話のフィルタリングサービスに関するものが中心となった。
高橋氏は、親が子どもよりも携帯電話に対する知識がない場合が多く、問題に対応しきれない状況があると紹介。「我々の会員6000人にアンケートしたところ、『今の携帯電話がどんな機能を持っているか、親よりも子どものほうが詳しい』と答えた保護者が6割いた。親からすると、魔物のようなものがぽんと出てきた、というような感覚で、子どもに説明ができない」(高橋氏)
ネットワークやフィルタリングに関する知識を持っている保護者は限られており、「(総務省の要請に対して)『それは命令?強制?』となりかねない」(高橋氏)と、きちんとした啓蒙活動を行っていかないとパニックが起きる恐れがあると指摘。「できるだけ早い段階で保護者に周知してもらいたい」と要望した。
高橋氏によれば、現在問題になっている「学校裏サイト」と呼ばれる学校非公認のサイト掲示板は、7〜8年前から存在し、すでに問題になっていたという。学校裏サイトは生徒同士の誹謗中傷などが書き込まれ、いじめの温床になっているとの指摘がある。
「裏サイトは前からあったが、生徒指導の問題や、『学校の責任問題になる』といって逃げられた。PTAでも問題になっていたが協力体制がなく、野放しになっていた」
小学生や中学生の保護者の代表である、社団法人 日本PTA全国協議会副会長の加藤秀次氏は、2006年から携帯電話事業者にフィルタリングを強化するよう要請してきたという。「そこは保護者の責任だと言われ、不毛なキャッチボールが続いた」(加藤氏)
しかし保護者からすると、技術的知識がない状況で責任を問われても、子どもを守りきれない現状がある。「保護者の責任だけでなく、子どもを単なる消費者だとは見ずに、事業者が1人の大人として襟を正して欲しい。保護者の責任はそこからで、フィルタリングを外した場合は保護者が責任を負う、というのが我々の総意だ。技術的な話についていけない大多数の保護者に我々は道を示さねばならない」と熱弁をふるった。
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