米国サンディエゴにて開催されたFAST Search & Transfer主催のイベント「FASTforward 07」では、Web 2.0にフォーカスした講演が数多く行われた。その中で、英Economist Gourpの調査部門、EIU(Economist Intelligence Unit)が実施した、企業におけるWeb 2.0の実態調査についてレポートしたい。
この調査は、様々な業界や国のシニアエグゼクティブ以上406人を対象に行われた。うち、41%は、CEOやCOOなど、役職に「Chief」と名の付く役員だ。
調査結果を発表するために壇上に上がったのは、EIUの寄稿編集者Jeanette Borzo氏だ。同氏はまず、「多くのエグゼクティブがWeb 2.0について認識しており、収益アップやコスト削減に結びつくと考えている。ただし、Web 2.0の詳細については、知識に幅がある」と述べた。
つまり、半数以上がWeb 2.0の三種の神器として、CGC(Consumer Generated Content)、コラボレーション、ソーシャルネットワーキングが必要だということは理解しているものの、「タグ付けが大衆の知恵を集約するために役立つとわかっていたのは全体の39%に過ぎず、ネットワークの効果を生かすアプリケーションがWeb 2.0アプリケーションだと認識していたのは全体の3分の1に過ぎなかった」とBorzo氏は指摘する。
特に、役職にChiefのつくクラスでは、「CFO(最高財務責任者)を除き、中間管理職よりもWeb 2.0に対する理解度は深い」とBorzo氏。また、職種ではITやセールス、マーケティング部門が、総務、経理、物流、法務部門などより知識が豊富で、業界別に見るとIT、通信、メディア、エンターテインメント、出版業界などが、メーカーや科学、政府、小売業界などより知識があるとしている。
では、企業にWeb 2.0を導入するにあたって障壁となっているのはどういった点なのだろうか。Borzo氏は、トップのサポートが欠如していることや、CFOがWeb 2.0に対して消極的なこと、ツールにばかり目を取られ、ネットワークの効果について忘れがちなことなどを挙げる。
「CFOが消極的なのは、Web 2.0が本当に収益に結びつくのか懐疑的になっているためだ。また、IT部門にWeb 2.0に必要なスキルがない一方で、新たに人を雇う予算もないことが原因だろう」(Borzo氏)
一方、既にWeb 2.0を企業に取り入れているアーリーアダプターは、どういった活用をしているのだろうか。現時点では、ブログやWikiの利用率が32.5%、SNSなどのコミュニティを活用しているのは31.08%だが、マッシュアップやRSSを活用している企業はそれぞれ21.5%、20.8%とそれほど高くない。しかし、今後2年の間に導入を考えている企業は、マッシュアップが42%、RSSが33.58%と高い比率になっている。
実際にWeb 2.0を導入している例としてBorzo氏は、「Procter & Gambleでは『Capessa』という女性向けコミュニティを形成しているほか、通信企業のGlobal Crossingではブログを使って顧客からのフィードバックを得ている。また、Citigroupでは専門用語や手続きが複雑なプロジェクトを支援するツールとしてWikiを使っている」と話す。
Borzo氏は、Web 2.0の導入を成功させるためのアドバイスとして、「CFOが理解してくれない場合、リスクと利点を含めた事例を示して説明すべきだろう。また、この分野は常に新しい技術が入ってくるため、ジェネレーションギャップが起こりやすいが、こうしたギャップを埋める努力をしなくてはならない。IT部門の技術が不十分で新しく人を雇えない場合は、外部の力を借りるべきだ」としている。
また、「流行に流されないよう注意せよ」と忠告しつつも、「もしWeb 2.0なんて関係ないと思っているのであれば、もう一度考えなおした方がよい。12歳から70歳のアメリカ人のうち、70%はインターネットを利用しているのだ。こうした顧客を取り込むためにどうすればいいのか、よく考えたほうがいいだろう」と述べた。
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