インターネット技術を研究する産学共同の業界団体である米Internet2は5月4日、同団体が認定するインターネット速度の新記録を発表した。記録は3万キロ・メートルで7.21Gビット/秒。2004年12月に東京大学を中心とするチームが実験して達成した。
実験に使ったインターネットは、東京(東京大学)を始点として地球全域を経由し、再び東京(東京大学)に戻る、全長3万3979キロ・メートルのIP転送網。経路は、順番に、(1)東京、(2)シカゴ、(3)ニューヨーク、(4)アムステルダム、(5)シカゴ、(6)シアトル、(7)東京、である。上記の経路を、光ファイバを用いて10Gビット/秒のイーサネット技術で結ぶ。
東京大学に設置した2台のパソコン間で、単一TCPストリームにより1485Gバイトのデータを30分間転送して速度を計測し、7.21Gビット/秒を記録した。パソコンのOSはカーネル2.6.6のLinuxで、ネットワーク性能測定・データ転送ソフトに「Iperf」を用いた。
Internet2が認定するインターネット速度記録は、転送速度に距離をかけた単位であるビット・メートル/秒。今回実験に使ったインターネットは全長3万3979キロ・メートルだが、Internet2がインターネット速度記録として認定する最大値は3万キロ・メートルであるため、認定記録は7.21G×3万キロで、21万6300Tビット・メートル/秒となった。
東京大学を中心とするチームは2004年11月にも同様の実験を実施してInternet2の記録を更新したが、今回はInternet2が認定するネットワークの全長を2万0645キロ・メートルから3万キロ・メートルに伸ばすことによって、記録をさらに伸ばした。背景には、ルータの数などを定めたInternet2の規約の都合上、11月の実験で用いたネットワーク長が実際の3万1248キロ・メートルよりも短い2万0645キロ・メートルとして認定されたという状況がある。この問題をルータの数を増やして解決することで、3万キロ・メートルに伸ばした。
実験に用いたパソコンのハードウェア仕様は一般消費者が家庭で使えるレベルのもの。ネットワーク接続カードは、米Chelsio Communicationsの「T110-CX 10GbE Protocol Engine」。IPプロトコルをハードウェア処理するのが特徴だ。その他の主な仕様は、CPUが米AMDのOpteron 248(2.2GHz)を2CPU構成、メモリは1Gバイト、ディスクは米Seagate Technology製の7200回転のIDE 80Gバイトである。I/Oバスは、転送速度1066Mバイト/秒のPCI-Xであり、7.21Gビット/秒の記録はほぼPCI-Xバスの限界に達している。
なお、今回の実験は単一TCPストリームの転送だが、複数TCPストリームの速度記録も抜いていたことから、複数TCPストリーム転送の記録も同時に更新した。これにより、IPv4ベースの単一TCPストリーム転送と複数TCPストリーム転送の2つの種目で記録を同時更新した。
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