6月5日に行われたSAS Intelligent Enterprise 2003では、ガートナージャパンの栗原氏に続き、アマゾン ジャパン代表取締役社長ジャスパー・チャン氏が、同社のビジネスインテリジェンス(BI)活用事例について講演した。
チャン氏はまず、同社のビジネスにとって顧客満足度が最も重要であると強調した。その理由はアマゾンのビジネスモデルにあるという。まず顧客満足度が向上するとユーザーのリピート率が高まり、サイトトラフィックが増える。そのトラフィックを目当てにDVDやソフトウェアなど第3者の企業がアマゾンに商品を提供するようになる。これにより品揃えが豊富になるほか、商品を安く仕入れることができれば低価格での販売が可能になる。それらがまた顧客満足度の向上へ循環していくという仕組みだ。
この顧客満足度向上を図るため、アマゾンではBIを活用した徹底したデータの分析を行い、それをもとにリサーチ、プランニング、実行、評価というマーケティングの基本的な4項目を実践しているという。具体的には、リサーチ段階での「データマイニングがとくに重要になる」とチャン氏は指摘。ここでは顧客の購買動向を認識し、購入頻度や購入金額を検証する。また、顧客がショッピングカートに入れた商品や購入量についても「かなり細かく分析する」(チャン氏)とのことだ。
アマゾン ジャパン代表取締役社長ジャスパー・チャン氏 | |
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これらのリサーチを元に、顧客に対してどんなメッセージを伝えるか、またどのような媒体を利用すべきか検討するプランニングを行う。利用する媒体はEメールやオンライン媒体が中心だが、DMやオフライン媒体を利用することもあるという。さらにそれを実行した結果については、データマイニングを活用して評価を行う。具体的には、クリックスルー率や購入量、訴求メッセージに対する反応などを分析して、顧客の購買行動の理解を深めていく。こうしてアマゾンはBIによって顧客のロイヤリティを高め、収益性を向上させているのだ。
チャン氏は具体的な事例として同社のEメールによるプロモーション手法について紹介した。チャン氏はEメールを使う利点について、「顧客に対してスピーディに情報を提供できるだけでなく、顧客の反応も早いため、迅速な判断が可能になる」と指摘。さらに、顧客の購買行動に関する履歴データベースから作られた顧客セグメントと連携することで、それぞれの顧客に対して適切なコンテンツを送ることができるという。
新商品情報メールを送信した場合の新刊予約受注量の推移。メールを配信すると受注量が大幅に伸びる。 | |
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実際、セグメント化された新製品情報メールの効果は大きいようだ。講演中にチャン氏が示したグラフを見ると、新刊予約について第一弾のメールを送信した時点で予約受注量が2倍、発売告知メールを送信すると約4倍になる。さらに本の発売直後に再び告知メールを送信すると、受注量は通常の約7倍になっている。
チャン氏によると、今後はさらに顧客の購買行動に関する分析を深め、現在のセグメントマーケティングからワン・ツー・ワンマーケティングに移行していきたいということだ。ユーザー1人1人のデマンドサイクルを分析することで、次に何をいつ購入するのかを予測し、「適切な時期に適切な提案をすることでユーザーの需要を喚起していきたい」(チャン氏)と話した。
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