KDDIは1月下旬、携帯電話とPCの両方で同じ音楽を楽しめるサービス「au LISTEN MUSIC MOBILE(LISMO)」を開始した。携帯電話に保存した着うたフルをPCでも再生できるほか、ユーザー同士で楽曲をリコメンドしあう機能などを備える。さらに4月には、PCと携帯電話の両方に対応する音楽配信サービスも始める計画だ。
固定通信と移動体通信を融合させたサービスを展開するという、いわゆる「FMC(Fixed Mobile Convergence)」という概念が注目されるなか、これまでもKDDIは携帯電話とPCのどちらからも利用できるポータルサイト「DUOGATE」を提供してきた。LISMOはこのFMC戦略をさらに推し進めたものといえるだろう。
KDDIはLISMOにどのような狙いを込めているのか。KDDIメディア本部メディアビジネス部メディアソフトグループリーダー課長補佐の八木達雄氏と、同グループ課長補佐の上月勝博氏に聞いた。
端末の音楽管理ソフトを共通化
まず、LISMOのサービス内容について確認しておこう。大きな特徴として、以下の4点が挙げられる。
これまでも一部のau端末ではPCで取り込んだ楽曲を端末に転送できる機能があったが、この場合のソフトはすべて端末メーカーが独自に作っていた。今回、KDDIはLISMOのサービスを実現するために、au Music Playerとau Music Portを独自に開発した。また、楽曲の著作権管理(DRM)技術も着うたフルのものをベースにした独自規格を採用した。KDDIでは今後発売するすべての端末をLISMO対応にする考えだ。
LISMOの誕生は「必然」
上月氏(左)と八木氏(右)は着うたの生みの親でもある。LISMOは数人のチームで開発したといい、専任担当者は上月氏ただ1人だ |
LISMOが生まれた経緯はどのようなものだったのだろうか。八木氏によると、LISMOは2003年末ごろ、必然的に生まれたアイデアだったという。
「東芝のHDD搭載端末『MUSIC-HDD W41T』の商品化を考えていたときに、外部メモリに対応しない端末である以上、データのバックアップをどうするかが問題となった。このとき、PCに保存するというのが自然に出てきた。東芝が独自にソフトを開発するという手もあったが、どうせやるならKDDIが統一したソフトを提供しよう、ということになった」。こうして、PCと携帯電話を連携させるためのソフトウェア開発が始まった。
一方、ほぼ時を同じくした2004年初頭には、ソニーからKDDIにうたともの企画が持ち込まれた。うたともはソニーがもともとPC向けに開発していたもので、携帯電話でも使えないかという相談があったのだという。「購入履歴でなく、再生履歴をもとにリコメンドするので、よりユーザーの嗜好に沿った結果が出せるのが面白いと思った。ちょうどmixiなどのSNSがはやりだした時期で、CtoCのコミュニケーションにも注目しており、企業が一方的に情報を提供するのではなくユーザー同士で推薦しあうのがいいと考えた」(八木氏)
ただし、ユーザーが直接コミュニケーションを取るとなると、トラブルも生まれやすくなる。そこでKDDIでは、ユーザーが書いた楽曲のレビューや掲示板のコメントはすべて目視で確認し、チェックを通ったものだけを公開しているという。また、SNS的な機能はユーザーのプロフィールページのアクセス履歴がみられる「あしあと」機能や、気に入ったユーザーを「お気に入り」に登録する機能など「最低限のものはつけている」(八木氏)という程度で、自分の友人を紹介したり、ユーザー間で直接メッセージをやりとりしたりする機能は設けていない。
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