Wikipediaは5日、今後、無登録ユーザーによる記事の投稿は認めないと発表した。Wikipediaの会員は、登録時にいくつかの個人情報を提示しているので、自分が書き込んだ記事の内容についてより大きな責任を負うことになる、という理屈だ。しかし、Wikipediaへの登録にはわずか数秒しかかからず、メールアドレスの提示すら義務付けられていない。
無論、Wikipediaの法的地位はまだ裁判で検証されてはいない。それまでは、オンライン百科事典として急成長を続けるWikipediaが、投稿された記事の内容について法的責任を問われないと断言することはできない。現在Wikipediaには、英語で書かれた記事が85万3630件掲載されており、また英語以外の十数カ国語で書かれた記事の総件数は、英語の記事の数を100万件以上も上回る。また2004年10月には1万6061人だった登録ユーザー数は、2005年10月末には4万5351人にまで増加した。
しかし、オンライン市民団体 Electronic Frontier Foundation (EFF) の顧問弁護士を務めるKurt Opsahlは、Wikipedia上の匿名の投稿内容に不満を抱いているSeigenthalerのような人々は、掲載サイトに対して取り得る法的手段がないことに気付くだろう、と指摘する。というのも、サービスプロバイダの法的責任を免除しなければ、資金力があり、かつ慎重なメディア企業しかサードパーティのコンテンツを掲載できなくなってしまう、というのが米議会の判断だからだ。
Opsahlによると、サービスプロバイダの法的責任が審理の対象となった最も有名な裁判の1つである、ZeranとAmerica Onlineの訴訟で、フィラデルフィアにある第3巡回区連邦控訴裁判所は、AOL、Amazon.com、WikipediaなどのオンラインサービスはCDAで保護されている、との明確な判決を下したという。
第3巡回区控裁は1997年に作成された意見書の中で、「本来であればサービスの第三者ユーザーによって書き込まれた情報についてサービスプロバイダが法的責任を負うことになる訴訟原因が発生しても、プロバイダは法的責任を免除される、とCDA第230条に明確に規定されている」と述べている。Opsahlによると、CDA法案が議会で可決される以前は、コンテンツを編集するための措置を講じていたサービスプロバイダが、そのような措置を講じていなかったプロバイダよりも重い責任を負うのか否かについて、法的環境は不明瞭だったという。
国際法律事務所DLA Piper Rudnickのパートナーで、サンフランシスコを拠点に活動しているRoger Myers弁護士は、「議会が(CDA)法案を可決した理由の1つは、自ら管理するインターネット上のスペースが世間の監視の目にさらされているサービスプロバイダなどを、保護することにあった」と述べ、さらに「議会はこの件についてはかなり明確に主張していた」と付け加えた。
さらにMyersによると、過去の訴訟で、サービスプロバイダが中傷的な内容の情報の存在に気付いていたにも関わらず、その情報を削除しなかった場合には、同プロバイダは何らかの法的責任を負う、との判決が下された例は過去に1度しかないという。しかし、BarrettとRosenthalの間で争われたその訴訟の判例は、現在カリフォルニア州の最高裁判所で再検討されているため、現在は引用不可能な状態にある。つまり、将来の訴訟において過去の判例として使用することはできない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
地味ながら負荷の高い議事録作成作業に衝撃
使って納得「自動議事録作成マシン」の実力
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス