11月18日に東京都内で開催された「CNET Japan Innovation Conference 2005 Autumn 次世代ウェブの検索サービスを探る」では、米GoogleインターナショナルプロダクトマネージャーのAngela T. Lee氏が講演の最後を飾った。検索市場の王者ともいえるGoogleの強さの秘密は、世界中の人の力を結集させるところにあるようだ。
Lee氏はGoogleのサービス開発姿勢について、ユーザーや外部の開発者と共に進めるのが基本だと話す。ベータ版で公開してユーザーからのフィードバックをもとに改良を進めたり、APIを公開して開発者を巻き込んだりするのがその一例だ。
たとえばウェブメールの「Gmail」は、数名の開発者が開発し、Googleの全社員が参加する「プロダクト・ディベロプメント・フォーラム」で議論したうえでベータ版をリリースした。その後、ユーザーから寄せられた声をもとに連絡先リスト内の検索や下書きの保存、メッセージの自動転送などいくつもの機能を追加して改善していったという。
APIの公開も積極的に進めている。11月3日(米国時間)に正式版を公開したデスクトップ検索では、「Googleだけで世界中にあるすべてのファイル形式を網羅することは不可能」と考え、APIを公開することで第三者がプラグインを開発できるようにした(関連記事)。これによって、メールソフト「Becky」や楽曲管理ソフト「iTunes」などにも対応できるようになったという。
また、Google EarthではAPIを公開するだけでなく、ユーザーがコメントをつけられるBBS機能を搭載した。これにより、米国でハリケーン「カトリーナ」による大規模な災害があったときには、被害に遭った人が自分の家があった地図上の位置に現在の居場所を書き込んで状況を伝えられるようにすることができたという。
Googleはオープンソースソフトウェア(OSS)業界とのつながりも強めている。これは、GoogleのシステムにLinuxをはじめとしたOSSを活用しているためだ。「検索のインデックス作成には大規模な量のサーバを利用している。もしここでライセンス料を支払っていたら、運営費用は膨大なものになっていただろう」(Lee氏)。OSS団体への寄付のほか、2005年夏には「Summer of Code」というイベントを実施し、OSSの開発に挑戦したい学生とそれを支援するメンターを世界的に結びつける活動を展開した。
11月15日(米国時間)に公開されたGoogle Baseという新サービスも、こういった考えの延長線上にあるものだ(関連記事)。Google Baseはユーザーが自由にデータをGoogleに投稿できるもの。Lee氏によれば、Google Baseという名称はデータベースをもじったものだという。
「イントラネット内の情報やID認証がいるサイトの情報はクローラーでは取り込めない。そこで、ユーザーに投稿してもらうのが最も良い方法だと考えた」(Lee氏)
Googleは世界中の情報をとりまとめ、どこでもだれでも利用できるようにするというビジョンを掲げている。「創業者のLarry Pageは『20年後には言語を問わず、疑問に思った瞬間にテレパシーのように答えを返せるようにしたい』と話している。これが実現するかどうかはわからないが、まずは言語の壁をなくすことから始めたい」とLee氏は話す。そのために機械翻訳のサービスに取り組んでいることを明らかにした。
ちょうど七五三の季節であることに合わせ、「今、七五三を迎えている子どもたちが成人する頃には、言語の壁を越えてあらゆる情報を活用できるようにしたい」と話して講演を締めくくった。
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