Ken Fuhrmanが経営する新興企業は、テレビ中毒者らにとっては、まさに希望の星だ。コロラド州に拠点を置く同社は、一般家庭向けに、デジタル化したテレビ番組や映画、音楽を保存できる高性能なメディアサーバを開発している。
しかしFuhrmanには心配の種がある。米国時間29日の午前中に、米最高裁がファイル交換ソフトウェア企業のGroksterとStreamCast Networksに対して、各々の運営するネットワーク上で蔓延する著作権侵害行為について法的責任を問うべきか否かについての審問を開くことになっているが、Fuhrmanは自身が経営するInteract-TVにもこの裁判の影響が及ぶのではないかと考えている。
他の多くのハイテク企業経営者と同様、Fuhrmanが事業を行なえるのは、テレビ番組の録画が可能なソニーのベータマックス・ビデオカセットレコーダーの販売を合法とした20年前の判決のおかげだ。29日の審問では、過去20年間で初めて、最高裁がその画期的な判決を根本から再検討することになる。
「(ベータマックス判決がなかったら)われわれは現在手掛けている製品など開発しなかっただろう」とFuhrmanは語る。「同判決の撤回/修正は、デジタルメディア分野の技術革新を抑制しかねない」(Fuhrman)
この裁判の行方を不安視しているのはFurmanだけではない。小規模の新興企業からIntelの幹部に至るまで、ハイテク業界全体が、29日に最高裁で行なわれるファイル交換訴訟の再審理を、業界史上最も重要な瞬間になると見なしている。この裁判の結果次第では、今後の技術革新が脅かされることになりかねないと、各企業の幹部らは口を揃える。
同訴訟の原告であるレコード会社や映画製作会社は、ハイテク業界の言い分に真っ向から反対しているわけではないが、(ファイル交換の蔓延によって)アーティストらが生計を立てるための手段や、ひいては芸術的革新そのものが危機に瀕していると主張する。ファイル交換を野放しにした結果、音楽や映画の著作権侵害行為がかつてないほど大規模に行われるようになったことから、著作権を基礎とする業界が生き残るにはファイル交換を規制しなくてはならない、というのが原告側の言い分だ。
この裁判を見守る事実上すべての人々の意見は、この裁判の結果によって、米国で最も活発な2つの業界で新たな基本原則が決まる可能性があるということで一致している。
「経済に与える影響から見て、この裁判は、ソニーのベータマックス裁判以来、最も重要な著作権裁判といえる」と、サンフランシスコに拠点を置くHoward Rice Nemerovski Canady Falk & Rabkin法律事務所に所属する著作権専門の弁護士、Annette Hurstは述べている。
同訴訟の被告はファイル交換企業のGroksterとStreamCastの2社だけだ。原告の映画製作会社とレコード会社は、被告である両社の事業について、他のNapsterの後継企業と同様、数百万人の人々に対し、自社製ソフトを使ってインターネット上で違法なファイル交換を行なうよう促すことによって成り立っている、と主張する。
Napsterの場合とは異なり、両社はコンピュータユーザーが両社の管理する中央サーバを経由することなく、互いのハードドライブ内に保存されているファイルを直接検索/ダウンロードすることができるようにするソフトウェアを配布している。原告側は、仮にGroksterとStreamCastを閉鎖に追い込んでも、両社が築いたPtoPネットワークは生き残り、さらに拡大する可能性があると指摘する。
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