独立社団法人情報通信研究機構情報通信ベンチャー支援センターは3月1日、「NICT情報通信ベンチャー・フェア2005」を開催した。「ユビキタスネット社会におけるベンチャービジネスの可能性を探る」をテーマに、2つの基調講演とパネルディスカッション、情報通信ベンチャー17社による製品展示が行われた。
基調講演Iでは、総務省情報通信政策局情報通信政策課の武田博之課長が、「少子高齢化社会が抱える課題を解決するのはu-Japan政策でありICT産業である」との見方を示した。u-Japanのuはユビキタス(ubiquitous)のuであり、「いつでもどこでも誰でも何でもつながる」という意味である。u-Japan政策は2006〜2010年の構想で、2001〜2005年のe-Japan政策の延長である。ICT(Information and Communications Technology)はIT(Information Technology)の言い換えで、ITにコミュニケーション(通信)の言葉を含めたものだ。
基調講演IIでは、慶應義塾大学環境情報学部の徳田英幸教授が、来るべきユビキタスネットワーク社会の実像とコンセプトを、予定の持ち時間を10分以上超過して語った。徳田英幸教授によれば、「ユビキタスでは、電球や椅子など従来はネットワークにつながっていなかったモノがネットワークにつながるようになる」としている。非IT的なものとIT的なものが融合することで、リアル空間とサイバー空間が融合し、まったく新しいサービスが生まれるという。
ユビキタスが生むサービスの形態は2つあり、「いつでも、どこでも、だれでも」を実現するタイプと、「今だけ、ここだけ、私だけ」を実現するタイプがある。いずれも課金サービスになり得ると徳田英幸教授はいう。その上で、「QoS(Quality of Service)という言葉があるが、ユビキタス時代のQoSのSはService(サービス)ではなくSatisfaction(満足)のSだ」(徳田英幸教授)という新しい略語を披露した。こうした例は多く、マイクロソフト製ウェブサーバのIIS(Internet Information Services)も、元々はInternet Information Serverだった。
ユビキタスを分かりやすく説明する例として、秋葉原を舞台とした男女の三角関係の映画を公演し、主人公の男子が女子にふられる手段にユビキタス技術が応用される。映画では冒頭で、主人公の男子が無線ICタグのRFIDを装着した舌を口から出して駅の改札を通る。次に、店でDVDの中身を購入すると、数秒でTシャツに埋め込まれた有機ELディプレイにダウンロードして再生する。クライマックスは、主人公がサングラスに「秋葉原にいる友達を教えて」と話しかけると、サングラスの表面に男女2人の名前と場所が写し出される。2人の現在のステータスを調べると、どちらもなぜか非公開。裏切られたと思った主人公は2人のいる万世橋に走る。そこで見たものは寄り添って歩く男女の姿だった。
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