Microsoftは、論議を呼んでいる欧州連合(EU)の「特許とソフトウェアに関する指令」にデンマーク政府が反対した場合、同国から雇用を奪うと脅しをかけた事実はないと述べた。
デンマークの経済紙Borsenが15日に報じたところによると、MicrosoftのBill Gates会長がデンマークの首相に対し、コンピュータを使った発明の特許取得に関する指令をEUが採用しなければ、同社が2002年に買収したデンマーク企業、Navisionにおける800人分の職を全て米国に移すと脅したという。
同指令の支持者は、この指令によって各国の法律が統一され、特許を受けられるものと受けられないものとが明確になることで、取引が簡素化されると主張している。一方、同指令に反対する人々は、Foundation for a Free Information Infrastructure(FFII)の言葉を借りれば、「米国のように特許を無制限に認めれば、巨大企業に権力が集中し、技術革新が抑制される」と主張している。オープンソースソフト対プロプライエタリソフトの論争において、同指令ならびに特許に関する一般的な問題は、この議論をさらに激化させている。
Microsoft Business Solutionsの欧州担当バイスプレジデント、Klaus Holse Andersenは15日に、Navisionの職を米国に移転することはありえない、と語った。
AndersenはZDNet UKに対し、「(Gates会長は)会談ではそのような発言はしていない」と述べ、さらに「(Navisionを)閉鎖する予定はない」と語った。
Andersenによると、Gatesとデンマーク首相との会談ではたしかに特許問題が議論されたが、Navisionにおける雇用問題とは無関係だったという。Navisionはデンマークのヴェドベックに拠点を置く業務用ソフト開発会社。
Andersenは、「特許に関する一般的議論は以前から存在し、多くの支社で議論されてきた」と述べ、さらに「われわれは特許法を強く支持しているが、(Borsenが)なぜそれをNavisionと結び付けたのかが分からない」と語った。
Borsenが同記事を掲載した後、デンマークの野党第一党である社会民主党は「Blackmail shall not dictate Danish IT policy(デンマークのIT政策は脅迫に屈しない)」と題したプレスリリースを発表し、その中で企業にはデンマークの政策に干渉する権利はないと主張した。
Andersenによると、Microsoftはこのプレスリリースについて、社会民主党と話し合いを行なったという。
Andersenは「ちょうど社会民主党に電話をかけたところだ」と述べ、さらに「同党がMicrosoftへの事前連絡なしにプレスリリースを発表してしまったことは大変遺憾だ」と語った。
デンマークのコンピュータ専門家の労働組合であるProsaもBorsenが報じた疑惑に関してMicrosoftを非難した。
問題の指令に関する論争に影響力を行使しようとして非難を浴びた大企業はMicrosoftだけではない。先月にはポーランドの日刊紙Gazeta Wyborczaが、Siemens、Nokia、Royal Philips Electronics、Ericsson、Alcatelの各現地法人が同国の首相にあてて、同指令に関する懸念の概略を述べた書簡を送付したと報じていた。
これらの大企業は、同書簡のなかで、ポーランド政府が同指令に対して抵抗を続けた場合、各社はポーランドへの投資を再考する可能性があるとにおわせていたと、同指令に反対するキャンペーンを組織するFlorian Muellerが配布したこの記事の翻訳には記されている。
ポーランド政府はこれ以降、同指令の批准を進めるEU評議会の動きに反対しないと述べている。ただし、同政府はいずれかの国が同指令の修正や批准の延期を求めた場合、これを支持するとしている。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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