米司法省は、ピア・ツー・ピア(PtoP)による著作権侵害は「広く蔓延している」問題であり、対策予算の増額、FBI捜査官の増員、検察官の権限強化以外に対処法はないとし、米国の知的財産権法の抜本的な改正を提案した。
同省幹部は12日(米国時間)に発表された報告書の中で、論議を呼んでいる2つの著作権関連法案の支持を表明した。これらの法案の下では、ファイル交換ネットワーク上での「受動的なファイル共有」も犯罪となり、著作権侵害行為を「誘発」する製品を販売する企業に対する提訴が可能になることから、米娯楽業界が強く支持している。
司法長官のJohn Ashcroftは、12日午後にロサンゼルスで行なわれた記者会見で、「司法省は知的財産権関連の犯罪に対して、米国史上最も強力かつ積極的な法的攻撃に出る用意がある」と語った。Ashcroftは今年3月に知的財産権に関する作業部会を創設した。
司法省は、今回の報告書の中で米議会に対し、新法の制定を求めている。その法の具体的な内容は、深刻な知的財産権侵害の捜査手段として通信傍受を認めると共に、違法にコピーされた製品の「輸入」という新たな犯罪を規定するというものだ。また同省は、ハンガリーの首都ブダペストと香港にFBI捜査官と検察官を配置し、現地の当局者を支援すると共に、「知的財産権の執行に関する訓練プログラムを開発」するよう提案している。
全米レコード協会(RIAA)は同報告書を絶賛し、「その概要は、知的財産犯罪に焦点を当て、その解決のためにエネルギーと資源を注ぐというものだが、レコード業界で働く人々、作詞家、作曲家、アーティストにとって、これらの提案は心地よい音楽のような響きがある」と語った。米映画協会(MPAA)も同報告書を賞賛し、「悪質な著作権侵害行為から米国経済を守ってくれる」として司法省に感謝の意を示した。
人気ファイル交換ソフトKazaaの配布元であるSharman NetworksのロビイストPhil Corwinは、「(司法省は)麻薬戦争をモデルにした著作権侵害戦争を支持しているようだ。いずれ(報告書の)提案について厳密な調査が行われることになるだろう」と指摘した。
またCorwinは「(司法省は)本来ならば適法とされる一般市民の行為を犯罪として扱う、禁酒法以来最大の禁止法を提案しようとしている可能性がある」と述べ、さらに「米議会は、一般市民による非商業的侵害行為を組織的犯罪行為と同列に扱う前に、長期に渡る厳格な審議を行うべきだ」と語った。
12日に発表された報告書はインターネット上の著作権侵害にのみ重点が置かれているわけではない。司法省は、商標権の侵害や企業秘密の侵害、偽造薬品への対応についても提案している。しかし、同省が報告書の中で支持しているインターネット関連法案こそが、大手映画製作会社/音楽業界のグループと、コンピュータ業界/「公正使用」の擁護者/図書館員のグループの間で展開されている政治闘争の核心部分をなしている。
同報告書のなかで司法省は、ファイル交換を可能にする製品の一般的な使用を犯罪行為とみなすPiracy Deterrence and Education Act(PDEA)とInduce Act(誘発法)への支持を表明している。Induce ActはMPAAとRIAAの支持を得ているが、ハイテク企業から激しい批判を浴びている。同法案に反対している企業としては、CNET Networks、BellSouth、EarthLink、Google、MCI、RadioShack、Panasonic、Red Hat、Sun Microsystems、Verizon Communications、Yahooなどが挙げられる。
また司法省は報告書の中で、コピー防止メカニズムを「迂回」できるハード/ソフトウェアを幅広く規制するデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の改正に向けた法的取り組みに反対している。同省は、1998年に制定されたDMCAは現状のまま維持されるべきであり、同法によって、「意図的かつ不正な(コピー防止技術の)迂回」が阻止されるはずだ、と述べている。
8月に検討されていた報告書の一部分が最終草案で削除されたようだが、これは異例な展開である。
反トラスト担当司法長官補佐で作業部会のメンバーでもあるHewitt Pateは、コロラド州アスペンで開催された会議で、同報告書は、司法省が著作権侵害者を民事裁判所に提訴することを認める法案には反対であるという内容になることを示唆した。しかし、最終報告書には今年6月に上院で可決された、いわゆるPirate Actについての議論は含まれていない。
この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。
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