ファイル交換の「息の根を止める」?--注目を集める技術に政治的な駆け引き

John Borland(CNET News.com)2004年03月04日 12時46分

 インターネットでの音楽ファイル交換を巡って新たな政治的戦いが勃発しようとするなかで、Kazaaなどのネットワーク上にある著作権付きの楽曲ファイルを自動的に特定し、違法なダウンロードを阻止できるとされる技術を開発した企業に注目が集まっている。

 Audible Magicは先月、ワシントンDCにあるさまざまな立法機関や規制当局のオフィスをまわり、PtoPソフトの内部に常駐し、Britney SpearsやOutkastといったアーチストが著作権を持つ楽曲の交換を自動的に阻止する技術を披露した。

 同社の技術はまだテスト中で、最終的には機能しないとされる可能性も残っている。だが、いくつかの立法機関では、簡単なデモを見ただけで、既に大きな関心を示している。

 「これは連邦議会議員が明らかに関心を示すものだ」と、実際にこの技術のデモを見た幹部レベルのある議会関係者は語っている。さらに同氏は「現時点で、我々にはどのような種類のソリューションでも受け入れる準備がある。このようなことを実現できる技術力があれば確実に何らかのチャンスが生まれるだろう」と付け加えた。

 Audible Magicは予想通り、同社がワシントンに話をするきっかけ作りを手伝った全米レコード協会(RIAA)の保護を受けている。同団体によると、蔓延する著作権侵害の阻止に真剣な姿勢を見せるつもりであれば、ファイル交換企業各社はAudible Magicの技術か、あるいはそれに類似するものを導入すべきだという。

 RIAAの支援、そして1カ月続いたプロモーション行脚により、Audible Magicの技術は立法機関や規制当局、そして各大学から新たな信頼を得ている。RIAA本社で1月後半にデモを見たロチェスター大学の学長、Chuck Phelpsは、同大学キャンパスでの採用に向け、この技術の評価を大学の技術スタッフに指示したという。

 RIAAは、少なくとも現時点では、Audible Magicのソフトウェアの使用について法制化や強制使用を求めているわけではない。実際、大統領選挙が行われる今年、この問題が議会から大きな注目を集める可能性は低い。しかし、PtoP関連ベンダー各社は、政治的に強硬な手段が打ち出されればどんなことになるか、そしてそれがファイル交換の世界にどんな脅威を与えるかということをよく認識している。

 プライバシー擁護団体やファイル交換の支持者たちは、ファイル交換など各種インターネットサービスの監視や阻止を強制するどんな技術に対しても、非常に批判的な態度を取ってきている。彼らの主張によると、ファイルをフィルタリングすることには、言論の自由を侵害し、技術革新を妨げる可能性があり、すべてがエンターテイメント業界の利害を守るのに役立つだけだという。

 こうした主張があるにもかかわらず、多くのインターネットアナリストが、Kazaaなどのファイル交換ネットワークが誇る非常に高い人気は、主として著作権付きの楽曲、映像、ソフトウェアの交換の上に成り立っているという。Napsterの全盛期に裁判所が命じたように、Kazaaなどのソフトウェア内部へ楽曲阻止フィルタを強制的に導入すれば、ファイル交換利用者が自由にファイルをやりとりする能力に深刻なダメージを与える可能性がある。

 Sharman NetworksのNikki HemmingをはじめとするPtoP関連企業の幹部は、適切なフィルタリングシステムを各社のネットワークに導入することは技術的に不可能もしくは実施できない、と数カ月前から議会で繰り返し訴えてきた。ところが、現在では一部のベンダーが議論の焦点を変え、たとえフィルタリングが技術的に可能であっても、その導入を義務づけるのは著しく大きな誤りだと主張している。

 ファイル交換ネットワークにフィルタリング機能を導入するというアイデアは、Napsterの最後の日々に試されたことがあった。法廷が同社に対し著作権付きの楽曲をほぼ完全に阻止するよう命じたの受け、同社はまず重要な作品をブロックしようとしたが、ユーザーが楽曲の名前を別のものに変えてしまったため、この試みは失敗に終わった。

 その後Napsterは、Relatableという提携企業からオーディオの「指紋」検出技術の提供を受け、これを利用して音楽ファイルのブロックを始めた。すると、同社のサービスでやりとりされるファイルの数が激減し、それまで1日に数千万もあったファイルがほとんど一晩のうちに僅か数曲になってしまった。Napsterが事業を閉鎖したのは、その後まもなくのことだった。

 Audible Magicの楽曲特定技術は、以前ヤマハで働いていたサウンドエンジニアのグループが生みだしたものだ。彼らはもともと映画の編集プロダクション向けに、足音やドアの閉まる音などを含む膨大なデータベースの検索向けにソフトウェアを開発した。1990年代後半に、このグループはHewlett-Packardのマーケティング部門で働いていたVance Ikezoyeと手を組み、 Ikezoyeが新たに興したAudible Magicに加わって、楽曲のようなデジタルメディアファイルの特定技術に注意を向けることとなった。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向け に編集したものです。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]