欧州連合、デジタル著作権案に関する採決を延期

 欧州連合(EU)は、知的財産権の施行に関して提案されていた指示の採決を11月に延期した。この指示は、物議を醸している米国の法律とこれまで度々比較されてきたもの。

 英国の市民権団体は、同法が成立すれば、MicrosoftやeBayといった同法の提案企業さえも、より深刻な訴訟攻撃にさらされるという負の影響を受けかねない、と指摘する。

 当初11日の総会で、現在提案されている知的財産権の施行に関する指示についての採決が行われる予定だったが、予定が変更され、11月4日に審議されることとなった。

 今年1月に、知的財産権の施行に関する法案が、議会に初めて提出された際、国際レコード産業連盟(IFPI)をはじめとする著作権保有者団体のロビイストたちは、その内容に失望感をあらわにし、法案のさらなる強化を求めた。

 IFPIは1月に、提案されている法案では甘すぎて、「偽造の蔓延」を抑止することはできないと主張し、また提案に盛りこまれている、著作権侵害者たちに対して訴訟を起こす際に使用可能な手段は、既存の国内法の下ですでに使用可能な手段の水準にも達していないと非難した。さらに、物議を醸している米国のデジタルミレニアム著作権法(DMCA)を引き合いに出し、EU法案はIFPIの言う国際標準にも達しない可能性がある、と非難した。

 IFPIの推計によると、海賊版CDの累積売上げ枚数は10億枚を超えており、CDの3枚に1枚が違法という計算になる。また著作権侵害行為により音楽業界が被った損害額は推定で46億ドルに上るという。

市民の自由に対する脅威?

 提案されている指示は、リバースエンジニアリングを禁じているため、大手多国籍企業が最大の受益者となる、との批判がなされている。

 しかし英国のFIPR(Foundation for Information Policy Research)のRoss Andersonは、この指示はMicrosoftなどの支援企業にも、意図したものと逆の結果をもたらす可能性があると指摘する。Andersonによると、現在Microsoftは市民による同社に対する特許権侵害行為の大半を強引に押しつぶせているが、それらの侵害行為が犯罪と見なされることになれば、同社にとって脅威にさえなりかねないという。

 Andersonは、オンラインオークション大手のeBayも、同法の施行により思わぬ損害を被る可能性があると指摘する。というのも同法の下では、知的財産を、その財産がもともと属していた法的管轄地域以外で販売した場合は起訴の対象となるからだ。

 「ニューヨークで購入したCDを翌年eBayのサイト上でパリ在住の人物に売った場合、著作権侵害で訴えられる可能性がある」とAndersonは指摘する。「今は誰も気にしていないが、そのような販売行為が犯罪と見なされるようになれば、厄介な問題になる」(Anderson)。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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