何百万人ものウェブサーファーを悩ませているポップアップ広告が、さらに押しつけがましいものになろうとしている。
人気のあるウェブサイトを訪れると、ポップアップ広告やポップアンダー広告のウィンドウが開く。複数のブラウザー画面がデスクトップに散乱することもしばしばだ。広告主は、ユーザーがそのウィンドウのどこかしらをクリックして、自社が宣伝しているウェブページに訪れてくれないかと願う。しかしユーザーの多くは、右上隅にある“×”をクリックしてウィンドウを閉じるだけだ。
ところが、比較的新しいある1つの機能によって、広告ウィンドウを閉じるのが困難になるかもしれない。『キックスルー(kick through)』と呼ばれる技術を使われると、ユーザーはカーソルをポップアップ広告の上に合わせるだけで、クリックをしなくても別のウェブサイトに飛んでしまうのだ。
例えば、格安旅行代理店の米Orbitzは、New York Times、ESPN.com、CondeNast(コンデナスト)などのサイトに、休日をテーマにした何百万ものキックスルー広告を配信している。広告には様々なアニメゲームが表示されており、ユーザーはただマウスをその上に移動するだけで、Orbitzのホームページに飛んでしまう。
このような広告に出くわした多くの人がこう嘆く。「ウェブ広告は押しつけがましくてわずらわしいものだったが、今やその限界を超えてしまっている。」
「ウィンドウを閉じようと思ったら、勝手に広告主のウェブサイトが開いた。デスクトップに6つのウィンドウが開いていて、そのうち3つが自分の意思によるものではない。そういう状態は本当にいらいらする」と、カリフォルニア州ブリスベンに住むハイテク企業の重役、ダイアン・シュライバーは不満を訴える。
キックスルー技術を利用して広告を配信しているのは、シカゴに本拠地を置くOrbitzだけのようだ。同社は定期的にポップアンダー広告を使って、格安旅行を探しているユーザーを呼び込んでいる。Orbitzのインタラクティブ広告代理店である米Otherwiseは、Orbitzの戦略をこう弁護する。「オンラインの旅行サービスは幅広く支持を集めている。多くの人にとって、直接Orbitzのサイトに移動できることは価値があることだ。」
「Orbitzの莫大な売上は、このようなポップアンダー広告と直接的に関係する」と、シカゴに拠点を置くOtherwiseのクリエティブ・ディレクター、マーク・ラティンは説明する。同氏によれば、「こうした広告を歓迎しているユーザーが非常に多くいるのだ」という。また同氏は、ここ8ヵ月間で、同様の広告がオンラインに登場していることも指摘した。
とはいえ、ウェブマーケティングでは、広告の問題がますます深刻になっている。ウェブサイト、ブラウザー、メールによって自由を奪われ、ユーザは広告を無視することが難しくなってきている。まだ若いこの業界は、ドットコムのバブル崩壊から回復しようと必死だ。多くの広告掲載サイトや広告主が、広告の新しい形式と顧客の“忍耐”を試している。
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