“Linuxいじめ”から数週間後、SCO GroupはついにRed HatのCEOであるMatthew Szulikの逆鱗に触れてしまった。
Red Hatは8月4日(米国時間)、7つの訴えを起こしてSCOに平手打ちを食らわした。Szulikによると、「中傷・流言キャンペーン」を封じるための措置だという。
SCOは今年初め、同社のUnixに関する知的財産をLinuxに移植したとして、IBMに対し10億ドルの訴訟を起こした。この一件は様々な方面に影響をもたらしている。もしSCOの訴えが通れば、顧客は大きな損害を受けることになる。実際、SCOはLinuxを利用する1500社に対し、SCOの知的財産権を侵害している恐れがあるという警告文を送りつけている。
8月初頭にLinuxWorldでひと休みしたSzulikはCNET News.com編集部との議論の席に着き、オープンソース運動の未来がかかったSCOとの戦いについて語った。
---はっきり言って、訴訟を起こしたのはなぜですか。現状に飽き飽きしていたからですか。
Red Hatやオープンソースの開発者コミュニティが犠牲になっているのを見て、「もう十分だ」と声を上げる時期に来ていると思ったからです。
---Linuxの未来をどう見ていますか。
Linuxの将来に関して、私に特別な見識があるわけではありません。しかし今、重要なことが起こっています。開発パラダイムや物理的なコードに関する知的財産権、さらに最も重要なものとして、特許法や著作権法についても、オープンソースや開発プロセスという文脈に基づいて見直すべきだと、疑問が投げかけられているのです。
我々は今がリーダーシップをとるべき時期だと考えており、この問題に対して力を入れる責任があると感じています。同時に、どの企業が本当にオープンソースやLinuxの発展に貢献するのか、そしてどの企業は本気ではなく、ただ搾取しようとしているのかを見極めたいと思っています。このことを一般の人にもわかってもらうことが大切です。
---つまり、誰が参加者で誰が寄生者かを見極めたいと。
そういう言い方はしませんが、そう言うと分かりやすいですね。非常に多くの企業が、自分たちはオープンソース企業であると言っています。本日の戦略はLinuxです、といったところでしょうか。小さい製品を扱うより、これでお金を稼ごうと言いたいのでしょう。
---SCOとMicrosoftは共謀していると思いますか。
そういった話がありますね。しかし、私が注目しているのは、我々の顧客とどう付きあい、どうしたら自分のやり方を貫けるかということです。
---しかし、この問題をどう思われます?
Tom Clancyなど、多くの人がこういった憶測で生計を立てています。驚くことでもありません。
---Microsoftは反トラスト法の裁判の教訓を生かしたのではないですか。
憶測は憶測を呼びます。3〜4週間前、SCOのカンファレンスコールにおいて、同社幹部の口から我々の名前が出てきました。Red Hatは噂や中傷、根拠のない発言に対し、自社のブランドをきちんと守っていきます。
---では、次の一手は?
我々は裁判所が、できるだけ早く事実を明らかにすることを望んでいます。我々はただ真実を知りたいのです。事実をはっきりさせ、誠実に対処したいと思います。それがゴールです。この問題をできるだけ早く解決したいのです。
---SCOから例のコードを見るための招待状を受け取っていないと伺っていますが。
NDA(秘密保持契約)を結べば誰でも見られるはずです。
---しかしまだ受け取ってはいませんよね。
現時点ではまだですね。
---何があればその招待を受けますか。
それが何の解決になるのでしょう。NDAにサインしてコードを見れば、その問題を扱うことができなくなります。それでは、知的財産の侵害問題に対するきちんとした答えにはなりません。それにこの方法では、我々が望むような素早い解決方法を顧客に提供することはできません。
---この訴訟によって、オープンソースコミュニティが扱うべき隠れた問題にスポットライトが当たるのでしょうか。
ご推測にお任せします。市場経済全体で起こるパラダイムシフトに対し、疑問を投げかける者は必ず生まれます。また、その生活や特権が危機にさらされる者も出てきます。この機会に最も低いコストで顧客に技術を提供しようとする我々の力を試すために、様々な方法を探そうとしているのです。
---Linuxコミュニティは賠償問題についても考えねばならないのでしょうか。SCOはエンドユーザーが次の狙いだとほのめかしているように思います。
確かにそうですね。公式にそう言っています。しかし、賠償というのはどういう意味で、誰に対するものでしょうか。コードベースであるがゆえに透明性があり、ソフトウェア開発者は声を上げることができます。ただ、厄介な問題もあります。プロプライエタリなソフトウェア環境でコードが見られなければ、どうすることもできません。
賠償というのは、Red Hatが非常に気をつけねばならない問題です。これはいまや、我々と顧客との問題になっています。この問題をきちんと把握し、取り扱い、顧客にとってどのような意味を持つのかを考えなければなりません。
---少なくとも、今後顧客になりうるユーザーが皆Linuxコードを全て確認し、知的財産権の問題はないと確認するのは無理でしょう。
そこは我々の責任下にあります。しかし賠償問題に関して言えば、昔は技術的な優秀さを競っていました。しかし今、残念なことに700人の博士号がいるような企業たちが、製品の合法性に議論の焦点を移しているのです。
---Microsoftは先日、総所有コストで比べればLinuxよりもWindowsのほうがメリットがあるという点を強調していくと話していましたが、そのようなことをおっしゃるとは意外です。
私がここ3カ月で顧客から聞いた話とは異なりますね。
---つまりMicrosoftは総所有コストを問題にしているわけではないと?
全くもって違います。
---ではMicrosoftは何を問題にするのでしょう。
彼らはLinuxやオープンソースを利用する企業の法的リスクへと焦点を移しています。
---Kazaaのダウンロードは、RIAAが訴訟を起こす計画を発表したことで勢いが衰えました。顧客が同じように弱腰になり、代わりを探すようになると思いますか。
注意深く知的財産部分を抜き取ろうとしている人がいます。また、根拠のない発言もなされています。しかし世界中のLinux開発者は注意深く誠実に、責任を持って製品を改良しようとしています。
---知的財産部分を抜き出す話をしているのではありません。どちらも、戦うより屈服する人間につく世界的な法曹団体が関わっていますね。
我々は自分達の資金を必要なところに注いでいるだけです。これはつまり、1つの製品を1つの企業が開発するというものではなく、新たな可能性を見出す機会なのです。
---Lintel(LinuxとIntelの組み合わせ)によってより直接的に影響をうけるのは、UnixやSunでしょうか。それともMicrosoftのWindowsでしょうか。
今までのUnixの既得権益が脅かされ、それに関連するプロプライエタリなチップのアーキテクチャが影響を受けることに疑いの余地はないでしょう。我々は10月の始めにRed Hat 3を発表する予定ですが、今注目しているのはAMDとIntelのハードウェアのパフォーマンスです。これらのアーキテクチャで十分なメリットが享受でき、エンタープライズRed Hat 3の素晴らしい機能が利用できるのであれば、誰がプロプライエタリなUnix OSを購入するでしょうか。
---Linuxは無料だという見方がされています。これは完全に正しくはありませんが、Linuxは伝統的に低価格で売られてきました。しかしRed HatではLinuxの価格を非常に高く吊り上げていますね。顧客からの反発はありませんか。
無料に比べれば、何だって高いでしょう。その質問がもし我々の価格が高いという趣旨ならば、何と比べてそう言うのですか。実際、Oracleの9iクラスタをLinux OSで走らせれば、世界中で24時間、6〜7つの異なるアーキテクチャを動かすことができます。何と比べて高いというのでしょう。kernel.orgにアクセスし、Oracle 9iにLinuxを実装するのに比べて、ということでしょうか。顧客が本当にそれを望むのであれば、すばらしいことです。我々は製品をセグメント化し、顧客に合った製品を提供するために価格付けをしているのです。90日ごとに見直しも行っています。我々が顧客に提供する経済的メリットを見れば、十分な価値があると信じています。
---IDCは先日、Linux開発にかかるコストはプロプライエタリシステムよりも高いと述べました。このことについて、どう思われますか。
この環境下でこの製品は他よりもコストがかかる、といったような包括的な発言に対してコメントをするのは難しいですね。
---環境のことは置いておきましょう。プロプライエタリなシステムと標準システムに関する調査レポートについて聞いています。この問題を理解するためにぜひ教えてください。
なぜAOLやVersign、Amazonといった企業がLinuxを採用するのかを考えると良いでしょう。もしくは米大手投資銀行9社のうち、7社がプロプライエタリなUnixからLinuxへと移行している点を見ても良いと思います。彼らは非常に賢い人々です。その選択によって受ける恩恵を考えた結果です。具体的な経費削減に関して、IDCのレポートでは矛盾が生じています。さらに言えば、同じようなオペレーティング環境というものは存在しません。したがって、例えばCNETの環境と技術下におけるROI(費用対効果)とRed HatのROIを比べても無意味です。配置状況や管理能力に関する問題もたくさんあります。
---Microsoftも同じことを言うでしょうね。
我々には顧客がいますから。
---彼らにも顧客はいますよ。
すばらしいことです。
---しかし、Microsoftの技術はオープンではなく、市場には両者が入る余地がまだあります。
良いことですね。
---自身の利益を守るために、Red HatとSuSEはプロプライエタリな“仕掛け”を作るのではないですか。Unixの開発当時を思い出してください。当初、Unixはオープンでしたが、その後、ベンダーがみなそれぞれの仕掛けを取り付けました。同じことが起こるのでは。
それは要するに、ビジネスの経済モデルの核がどこにあるかという問題です。我々はオープンソース企業です。だからこそ、我々の技術をGPLライセンスの下で提供し続けています。私の経験から言えば、1度仕掛けを作り、自分が何者であるかという態度を変え始めると、ブランドが崩壊します。
---しかし、特別なソースを盛り込むことに魅力は感じませんか。
その場合、GPLとは異なるライセンスを用いねばなりません。それではオープンソースの協力的な力を全て利用することはできなくなるのです。何がここまでの成功をもたらしたのか。それは中国、インド、ボストンにいるライブラリやカーネルなどの開発者の素晴らしい貢献によるものです。コミュニティがこの成功をもたらしたのです。
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