アイコンや絵文字を利用でき、遊び心のあるデザインを採用するSaaS型プロジェクト管理ツール「Backlog」。これを開発するのは福岡発のベンチャー、ヌーラボだ。
ヌーラボの設立は2004年3月。当時福岡でプログラマーの派遣会社を通じて出会った現代表取締役の橋本正徳氏と現取締役の縣俊貴氏、田端辰輔氏の3人。彼らは仕事のかたわらでオープンソースソフトウェアのコミュニティに所属して福岡を中心に普及や啓蒙活動をしつつ、「Mobstar」というグループ名でWikiや掲示板、バグ管理ツールなどを公開していたという。そして、これまで開発に専念していた派遣での仕事に加えて、「顧客への提案からトータルで挑戦したい」という思いから、開発会社としてヌーラボを設立した。
同社は自社サイトで、「アジャイル開発のヌーラボ」をうたう。アジャイル開発とは、「イテレーション」と呼ぶ短期間で機能を開発していく比較的新しいソフトウェアの開発手法だが、これは起業当時からのコンセプトだという。「ただ起業して受託開発をするのではなく、『アジャイル開発』への取り組みにもチャレンジしてみたかった」(田端氏)
起業前に居た派遣先企業が同社のメンバーを評価していたこともあり、同社経由で「余るほどではないが、仕事をとれた」(田端氏)状態だったヌーラボ。しかしある受託案件をきっかけに、自社サービスの提供に乗り出すことになる。
その受託案件では、受託元企業からプロジェクト管理ツールが指定されていたのだが、ユーザーインターフェースも洗練されておらず、操作性も悪く「仕事のやる気がなくなるくらいの仕様」(田端氏)だったのだという。当時、プロジェクトやバグを管理するツールといえば、海外でいくつかあるものの、日本語環境に最適なものはほとんどない状態。そこで、自身で開発して利用したプロジェクト管理ツールこそがBacklogの原型だという。その後、「せっかく作ったので」という軽い気持ちから2005年に無償公開したところ、数千ユーザーが利用するに至ったため、2006年より商用版の提供を開始した。
Backlogは、ガントチャートによる進捗管理から、課題管理やファイル共有、Wikiなどプロジェクト管理機能を一通り備えるが、何より注力したのは「とにかく使いやすく、楽しく仕事をできること」だという。ユーザーごとにアイコンを選択したり、コメント時に絵文字を利用できるようにしたほか、外部のデザイナーに依頼してポップな色遣いで親しみやすいインターフェースを用意した。
またコミュニケーションのための機能にも重きを置く。2月にはチームメンバーの報告に対して、がんばったと思えばクリック1つで評価を与えられる「スター機能」も実装した。「開発は『1人対仕事』ではなく、『チーム対仕事』。チームのメンバーをほめたり、仕事のやり方がいいことに気付いたりした時、評価できる仕組みを入れた」(田端氏)
Backlogは現在、少人数のデザイン系の会社を中心に利用の幅を広げている。大企業への導入事例もあるが、1プロジェクトで100人未満、プロジェクト単位で契約というケースが多いという。価格は個人向けの無償版から組織規模に応じて複数のプランを用意しているが、平均利用額は月額8000円程度だという。パッケージ版も用意しており、基本機能を備えたスタンダード版で39万9000円となっている。
現状同社の売上の9割は受託開発が占めており、Backlogをはじめとした自社サービスの売上は約1割。今後はBacklogの機能拡張に加えて、同じく自社で運営する図形共有ツール「Cacoo」に有料オプションを追加するなど、自社サービスでの売上拡大を目指す。
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