IBMが医療記録(カルテ)用検索エンジン「Nationwide Health Information Network」(NHIN)を開発した。この検索エンジンが実用化されれば、病院、薬局、研究所、開業医が保存する個人記録のマッシュアップが実現することになる。
IBMは米国時間1月23日、米保健福祉省(DHHS)に対し、NHINを公開した。IBMは、DHHSとの間で1年間の契約を結び、標準規格をベースにした医療記録システム間の通信が可能なネットワークのプロトタイプを開発した。同社は、今週ワシントンDCで開催される「Third Nationwide Health Information Network Forum」で、NHINのデモを行う。
Bush米大統領は2005年に、デジタル医療記録を2014年までに実用化するよう命じた。これまで、いくつかのグループがそのための技術開発に取り組んできたが、時間および費用効率の良い共有化された医療データを提供する一方で、患者のプライバシーも守るという、相反する2つの条件に悩まされてきた。
IBM Global Business Servicesの国家医療担当ディレクター、Tom Romeo氏によると、NHINは、集中データベースではなく、さまざまな医療データベースシステム間の通信ネットワークである点で、現在開発されている他の医療記録管理システムと異なるという。
IBMの試験版ネットワークでは、患者の氏名、誕生日、住所を入力することにより、同ネットワークに接続されている医療データベース内の個人情報の検索が可能だ。Romeo氏によると、同システムのセキュリティは、医療保険の相互運用性と責任に関する法律(Health Insurance Portability and Accountability Act:HIPAA)に基づいており、仮にNHINが入力条件に完全に一致する結果を発見しても、検索者はそのデータの閲覧しかできないという。
現在、NHINは7つの病院と24の開業医院で試験的に使用されている。ただ、検索には患者の承諾が必要だ。データは検索時に1度閲覧できるのみで、データそのものは、もともと保存されている病院や開業医院のシステムのネットワーク上に残る。IBMによると、同システムはソフトウェアやハードウェアには「とらわれず」、さまざまなシステムが接続できるように「オープンスタンダードに準拠している」という。
Romeo氏によると、NHINは、米国疾病対策予防センター(CDC)などの政府の規制官庁が医療の動向調査目的でデータにアクセスすることも可能だが、それらの官庁でも患者の身元は秘密事項とされるという。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。 海外CNET Networksの記事へ
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