Advanced Micro Devices(AMD)は、2007年に新しいチップアーキテクチャを投入することになっているが、Intelから市場シェアを奪うことに役だった基本設計にはあまり手を加えない方針だ。
「Next Generation Processor Technology」と呼ばれているこの新チップアーキテクチャは、現在出回っているOpteron、Turion、Athlon 64のベースになっている設計を強化したものとなる。この新しいアーキテクチャを採用することで、チップのパフォーマンスは向上し、消費電力も抑えられるが、ただしAMDは設計コンセプト全体に大幅な変更を加えてはいない。この新アーキテクチャを採用するプロセッサは2007年に登場する。
AMDのシニアフェローChuck Moore氏は、「1年おきに新しいコアを投入することに注力するのではなく、全体的なシステムのパフォーマンス(向上)に力を入れる」と述べている。
対照的に、Intelは2006年後半に自社チップの基本アーキテクチャを大幅に改め、その後も少しずつ設計に変更を加えていこうとしている。このアーキテクチャをベースにつくられる「Merom」「Conroe」「Woodcrest」の各プロセッサは、最新のAMDチップに比べてパフォーマンスが最大20%も上回り、また消費電力も低減されると、同社は断言している。
Moore氏は、Intelから将来登場するチップとの細かい比較はしなかったが、現時点ではAMDが最大のライバルであるIntelを圧倒している、と断言した。
「パフォーマンスと消費電力を比較した場合、両社の製品の間にはとても大きな差がある」(Moore氏)
今後18カ月の間に、IntelとAMDのどちらがより優れたチップアーキテクチャを投入できるかは、2007年のPC市場にとって大きな問題の1つになるが、そこには多くの要因が絡んでくる。
AMDの新しいアーキテクチャをベースにつくられるチップには、HyperTransportの高速バージョンが搭載されることになっている。HyperTransportとは、AMDチップに採用されているI/O技術のことだ。技術標準化団体によって先ごろ承認された「HyperTransport 3.0」なら、5.2Gバイト/秒のデータ転送速度を達成できると、Moore氏は説明した。HyperTransportは、64ビット処理技術ほど注目を集めてはいないものの、近年のAMD製チップのパフォーマンス向上を支えているものだ。
さらに、これらの新しいチップではプロセッサコアの数が4つになる(現在は最高で2つ)。
新チップの大きな変更点の1つはキャッシュだ。現行のAMDチップでは、コアごとに2つのキャッシュが用意され、これらのキャッシュが完全に各コア専用となっている。それに対し、今後登場するチップでは、コアごとに2つの専用キャッシュを搭載するほか、3つめのキャッシュを複数のコアで共有する。プロセッサがメインメモリからデータを取り出すには時間がかかるが、3つめのキャッシュがあるため、この処理の回数が少なくて済む。
一般的に、Intelのチップのほうがキャッシュ容量が大きい。ただ、AMDがメモリコントローラをチップに内蔵してメモリ待ち時間を短縮しているのに対し、Intelはこれをしていない。両社の間では、キャッシュの容量を増やしてメモリコントローラを別にするのと、キャッシュの容量を抑えながらメモリコントローラを内蔵するのと、どちらの設計のほうが優れているかについての議論が現在も続いている。
まもなく登場するAMDチップも、アイドル時にメモリコントローラやプロセッサコアへの電源供給を個別に切断できるようにして消費電力を抑えると、Moore氏は説明した。現在も、メモリコントローラとプロセッサコアは低負荷時に同社速度を落としているが、ただしこれは両方がアイドル状態に近いときに限られている。
新チップに内蔵されるメモリコントローラはDDR2メモリにも対応し、時期が来れば現在策定中のDDR3仕様にも対応すると、Moore氏は付け加えた。一方、Intelは今後投入するサーバ用チップに「FB-DIMM」と呼ばれる別のメモリ規格を採用していく。この点についても、どちらのほうが優れているのかという議論が両社間で続いている。AMDによると、FB-DIMMのほうが発熱量が大きいという。
一方、Intelの関係者は、FB-DIMMの発熱量は非常に少なく、AMDが標準のDDRメモリよりも高速なFB-DIMMをサポートしないのは、チップにメモリコントローラが内蔵されているためだと付け加えた。
なお、Moore氏は、カリフォルニア州サンノゼで開かれた「Spring Processor Forum」でAMDの計画に関する概要を明らかにした。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
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