サンフランシスコ発--Salesforce.comは、顧客企業によるウェブ上での取引増大を目指す取り組みの一環として、新しい「オンデマンド」のソフトウェア・マーケットプレース(アプリケーション共有サービス)の詳細を発表した。
同社は米国時間1月17日に、マスコミと顧客企業を対象にしたイベントを開き、昨年9月に明らかにしていた「AppExchange」を正式に立ち上げた。今回一般利用が可能になったこのソフトウェア・マーケットプレースは、Salesforceの顧客やパートナー各社が、同社のASPプラットフォームを介してアプリケーションを配布・共有できるようにするものだ。
Salesforceの最高経営責任者(CEO)Marc Benioffはこの動きについて、同社が進める「ビジネスウェブ」の取り組みにおいて重要な展開だと述べた。同社では ワールドワイドウェブを「ビジネスの場としてのウェブ」に変える取り組みを進めてきており、AppExchangeを通じて、「マッシュアップ」や独自の情報配信機能など、インターネット上にある顧客指向の技術革新の多くをビジネスユーザーにもたらそうとしている。
「消費者向けのウェブから、ビジネスウェブが発展した。いままで活発な動きがみられたのは消費者向けのウェブのほうだ。そこではエンターテインメントや買い物に主眼が置かれている。それと同じことをビジネスユーザーに提供するにはどうしたらいいのか」と、Benioff は基調講演のなかで述べた。
同氏はその後1時間半にわたって、この課題に答えるものとしてAppExchangeを大いに売り込んだ。このサービスには、ソフトウェア開発ツールとプログラミングインタフェースが含まれており、開発者が、たとえばSaleforceの売上データとGoogle Mapを組み合わせた「マッシュアップ」(特別なハイブリッドのアプリケーション)を作成することができるようになっている。
Benioffは、AppExchangeの能力を示すために、「Territory Management」のデモを行った。これは、同社がGoogle Mapを利用して開発した新しいマッシュアップだ。このプログラムは、Salesforceのデータベースから取り出した顧客情報を米国地図の上に配置するもので、各顧客の所在地を示す色分けされた小さな「吹き出し」のなかにその情報が表示される。同氏が吹き出しの上にマウスを動かすと、その顧客に関する詳細が表示された。このプログラムのルックアンドフィールは、Salesforceの他のアプリケーションと変わらない。
「このマッシュアップがとても気に入っている。前の世代の企業用ソフトウェアでは考えられもしなかった、ビジネスウェブの素晴らしい利用例だ」(Benioff)
同社はまた、無料のVoIPサービスを提供するSkype Technologiesと共同開発した新しい製品も披露した。これはAppExchangeから、SkypeとSalesforceのデータベースに保存されている顧客データとを連携させるもので、顧客はウェブ経由で電話会議を開くことができる。また、同社はAdobe Systemsとも同様の提携を行い、Salesforceのプラットフォーム上で、ビジネス文書をPDF(Portable Document Format)に変換できるサービスも開発した。
AppExchangeには、Adobe SystemsやSkype Technologies以外にも複数の企業が参加しており、現在合わせて160を超えるビジネスアプリケーションがオンディマンドで利用できるようになっている。AppExchangeからプログラムをダウンロードした顧客の数はすでに1800社を超えており、さらに8万社が現在このテストを進めているとBenioff は語った。
AppExchangeを利用する企業は、アプリケーションのダウンロードや購入だけでなく、自ら開発したアプリケーションを配布することも可能だ。開発者は無償もしくは有償でアプリケーションを配布できる。また、Salesforceは自社のコンピュータインフラ上でこれらのプログラムを無償でホストしていくが、ただし一部の開発者に対しては品質管理プロセスにかかる費用として少額の認証料を請求することにしている。
BenioffはAppExchangeサービスをソフトウェアコード用のブログになぞらえ、これを利用することで開発者は自分のつくったアプリケーションを宣伝したり、配布したりすることが可能だと述べた。同社はまたこのサービスにRSS技術を組み込み、登録した顧客に新しいソフトウェアが出たことを知らせるようにする計画だ。
「ブログの作成や公開と同じくらい簡単に、アプリケーションを開発できるようにすべき だ」(Benioff)
同氏は、SAPやOracle、Microsoftが「ビジネスウェブ」の波に乗り遅れているとして、これらの競合他社を非難した。
同氏は3社の名前が載ったスライドを指しながら、「ここに参加していない企業がたくさんある」と述べた。「彼らはいまだに巨大なアプリケーションを設計している。彼らの製品はあまりに巨大になったため、いまではCDに収まりきらず、DVDで出荷されている」(Benioff)
Salesforceでは、自社のデータセンターにホストしたソフトウェアを顧客に提供しているため、CDやDVDは1枚も出荷していないが、これが同社の大きな売り物の1つとなっている。同社のサービスを利用する顧客は、複雑なビジネスアプリケーションをインストールしたり、アップデートしたり、監視したりする面倒を省くことができると同社は説明している。そして、ADPやCisco Systems、Merrill Lynch、Sprint、Symantecなど、あわせて1万9000社近い企業がすでに同社のサービスを利用している。
同社は、AppExchangeがライセンス販売の拡大につながることを期待している。AppExchangeで公開されるアプリケーションを利用するには、Salesforceからユーザー数に応じたライセンスを購入する必要がある(ただし、どのアプリケーションもテストは無償で可能だ)「Salesforceにとっての最終目標は、ライセンスユーザーの数を大幅に増やすことだ」とPrudential SecuritiesアナリストのBrent Thillは述べている。
同社はこの日、CRMソフトウェアの新バージョン「Winter '06」や、「 Sandbox」という一連のソフトウェア開発/テストツールも発表した。「Winter '06」ではインターフェースが新しいものになり、テリトリ管理やカスタマイズ可能な予測機能など新しいアプリケーションが追加されている。
先月発表されたSandboxは、トレーニングやテストを目的とした顧客がSalesforceのシステム用に開発したバージョンの複製で、1ユーザーあたり月額18〜25ドルで利用可能だ。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス