ホスティング型CRMアプリケーションという主力業務の枠を超えた成長を望むSalesforce.comが、顧客自身によるシステム構築を可能にする新しい戦略を打ち出している。
Salesforceは、「Software as a Service(SaaS)」という新しいビジネスモデルに基づいてソフトウェアを提供する企業のなかでも、リーダー的な存在だ。そのSalesforceが、「Multiforce」という新しい開発システムを擁して、賭けに出ようとしている。同社のパートナーや顧客企業は、Multiforceを利用して、ソフトウェアをカスタマイズし、独自のサービスを構築することができるようになる。
アプリケーションのカスタマイズを可能にするという戦略は、「No Software」というスローガンを掲げる同社にとって、不適切と思われるかもしれない。しかし、アナリストは(今ある情報から判断する限り)、この計画が理にかなったものであると述べる。同社の最大の目標は単純明快だ。より多くの企業にSalesforceのサービスを利用しなければならない理由を提供し、さらには既存の顧客に満足を与え続けることによって、自社にライセンス料が入り続けるようにすること。これこそが、同社の究極の目標だ。
「どのようなサービスでも、需要はある時点で横ばいになる。これを克服するために、新しいサービスを追加投入する必要が出てくる」と英Ovum ResearchのアナリストDavid Bradshawは述べる。「この手法により、新規顧客の獲得が停滞しても、他社との競争が激化しても、シェアを拡大させることが可能となる。先を見越した良い考えだ」(Bradshaw)
Salesforceの最高経営責任者(CEO)Marc Benioffは、Multiforceを6月に発表している。Salesforce.comの幹部によると、同社は、この秋に開催する年次のユーザーミーティングにおいて、価格体系や、ホスティングされるソフトウェアのパートナーを含めた計画の詳細を明らかにする予定だという。
Salesforceでは依然として、売上も新規契約数も順調に伸びている。同社は5月中旬に、2006会計年度第1四半期の決算を発表し、純利益が440万ドル(1株あたり4セント)に増加したと発表している。同社が前年同期に計上した純利益は43万7000ドル(1株あたりの損益はゼロ)だった。また、前年同期は3480万ドルだった売上も、同四半期には6420万ドルにまで拡大している。
Salesforceは同四半期中に、顧客数が4万増え、26万7000ユーザーになったと述べた。
他のアナリスト同様に、Bradshawも、Salesforceのサービスに付加価値を与えるサードパーティ製ツールが開発されるようになれば、Benioffの打ち出した戦略に先見の明があったことが証明されるだろうと考えている。
また、Salesforceは、独立系ソフトウェアベンダー(ISV)がMultiforceを利用して、Salesforce製の既存のツールを拡張する製品を開発することに期待している。同開発プラットホームを使用することで、顧客やISVは、Webサービスを用いたシステムを開発することが可能になる。これらのシステムでは、Salesforceのユーザーインタフェースをシームレスに組み込んだり、SalesforceのCRMツール経由でデータを呼び出したりすることが可能になる。
例えば、Salesforceは、Googleの地図ソフトウェアのアプリケーションプログラミングインタフェースを利用したツールを既に開発している。このツールにより、Salesforceのユーザーは、オンラインのCRMシステムとGoogleのコードから提供されるデータを使って、例えば、顧客企業のオフィスまでの地図を作成したりすることが可能になる。
この記事は海外CNET Networks発のニュースを編集部が日本向けに編集したものです。海外CNET Networksの記事へ
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」