「ちょっと不思議な感じだ」--Linux開発を仕事にするトーバルズ

 Linus Torvaldsが、仕事としてLinuxに取り組むことになった。

 自由に入手可能なオペレーティングシステム、Linuxの生みの親であるTorvaldsは、Open Source Development Lab(OSDL)に参加することになった。同コンソーシャムは、Linuxでハイエンドな機能を実現するためつくられた団体である。

 OSDLフェローとなるTorvaldsは、次バージョンとなる2.6カーネルなど、今後のLinuxバージョン開発にフルタイムで取り組む、との声明をOSDLが発表した。

 「いままで12年間自分がやってきたことに、ついに正式に取り組むことになって少し不思議な感じがするが、次の2.6.xバージョンのリリースのために、Linuxに完全に集中できることには意味がある」とTorvaldsは、OSDLが発表した声明のなかで語った。「OSDLはメーカーに依存しない、中立的なLinux開発の場として完璧な環境だ」

 TorvaldsはOSDLで、山ほどの仕事を抱えることになる。昨秋には、Torvaldsは2.6カーネルを今年6月にリリースしたいと考えており、米IBMなどの企業でも2003年後半にはこの新カーネルを製品に搭載する予定でいた。しかしIBMは、最近開催されたEnterprise Linux Forumで、カーネルのリリースが2004年前半になる見込みだとLinux顧客に説明した。

 だがTorvaldsは、Linuxの最新テストバージョン2.5.72をリリースしている。2.5.xシリーズは開発バージョンで、それが後に、実世界で利用される2.6.xバージョンになる。

 Torvaldsは、現職の米Transmeta技術フェローのポストを一時的に休んで、OSDLに参加する。彼はTransmetaでは、研究プロジェクトに携わっていた。

 TorvaldsのTransmeta休職期間は無制限だが、Transmetaでは、TorvaldsのOSDLへの出向は同社のためにも役立つ可能性があると述べている。OSDLのプロジェクトのなかには、通信環境やデータセンター用にLinuxを調整するという内容のものも含まれており、これはTransmetaが自社チップの販売に注力している分野だからだ。

SCOの非難に反撃

 Torvaldsは、折りしもLinuxをめぐる状況が騒がしいなかで、OSDLに参加することになった。Linuxオペレーティングシステム(OS)は、特に企業分野で人気がますます高まっているが、一方で、米SCO Groupによる訴訟に巻き込まれている。

 SCOは今年3月、米IBMがライセンス契約を破ってUnixに含まれる自社の企業秘密をLinuxに流用したとして、IBMに対して10億ドルの損害賠償を求める裁判を起こした。さらに、16日(米国時間)には、この訴えの内容を修正し、損害賠償額を30億ドル以上に引き上げている。

 Torvaldsは16日のインタビューで、彼にも非難を向けているSCOの行動を激しく攻撃した。SCOがIBMを訴えた修正訴状には、「Linuxの重大な欠点は、Linuxの開発プロセスを管理するLinus Torvaldsが、さまざまなソフトウェア開発者から提供されたソースコードの知的財産権の出所を明らかにできないこと、および/もしくは、それをしたがらないことにある。……その結果、Linux 2.4.xやLinux 2.5.xといったバージョンのなかに、非常に多くの保護されたUNIXコードが使用されていることが現在判明しているが、これはSCOの契約上の権利および特許権を侵害するものである」と記されている。

 これに対し、TorvaldsはSCOの見解に異議を唱えた。

 「私は、知的所有権に対して深く配慮している。私自身、個人的に、普通の人よりも多くの知的所有権を保有しているし、さらに総体としてのLinuxカーネルの著作権保持者として、知的所有権を特に大事にしている。私にとってはそれが日常当たり前のことなのだ。私は個人的に、SCOが持っているものよりもっと価値のある知的所有権を管理しており、この問題をとても深刻に捉えている」と、Torvaldsは電子メールでのインタビューに答えている。

 Torvaldsは、OSDLが本来の使命に向けて活動できるよう取り組んでいく見込みだ。OSDLは、米Hewlett-Packardや米Intel、米IBM、NEC、(そしてSCOの前身のCaldera Systems)が、マルチプロセッサへの対応など、ビジネス指向のLinuxの新機能をテストするため、2000年8月に設立した。オレゴン州ビーバートンに本部を持つOSDLは、ソフトウェア機能のテスト用として2つのデータセンターを運営しており、米Red Hatや独SuSEなどのLinux商用ディストリビュータとも提携している。

 TorvaldsはLinux Kernelメーリングリストへの投稿で、「Transmetaはいつも、私がLinuxに好きなだけ時間を費やすことを許してくれる点で、大変素晴らしい会社だ。しかしそのため、最近自分が「本当の仕事」をほとんどしていないことに、少し罪悪感を感じていた」と述べている。

この記事は海外CNET Networks発のニュースをCNET Japanが日本向けに編集したものです。

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