電子文書の作成・管理ツールAdobe Acrobat日本語版の最新バージョンとなる7.0を12月1日に発表したアドビ システムズ。同社が共通ドキュメントフォーマットとして提唱するPDFは、無償ビューアAdobe Readerとともにひろく受け入れられており、PDF関連製品を通じてアドビは積極的にエンタープライズ市場に進出している。同社の戦略を米Adobe Systems インテリジェントドキュメントビジネスユニット プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのユージーン・リー氏に聞いた。
リー氏は、「(新バージョンは)オフィス内外で情報共有を行う際のコミュニケーションツールになる」と述べる。これは、Acrobat 7.0 Professionalの新機能として、無償のReaderのみを利用しているユーザーに対し、Acrobatの機能を使えるよう権限を与えることができるためだ。これまでPDFファイルを表示・印刷することのみ可能だったReaderのユーザーは、権限を与えられたPDF文書に対し、注釈を入れたり電子印鑑機能ではんこを押したりすることができ、Acrobatユーザーと同じようにレビュープロセスに参加できるようになる。電子印鑑機能は、印鑑が重要な役割を果たす日本市場に向けて追加されたツールだ。
Adobe Systems インテリジェントドキュメントビジネスユニット プロダクトマーケティング担当バイスプレジデント ユージーン・リー氏 |
また、2005年春に発表予定のAdobe LiveCycle Policy Serverは、Acrobatと連携することでPDFファイルに対してセキュリティポリシーを設定することができるものだ。リー氏は、情報漏えいは内部から起こるものだと指摘し、ドキュメントに閲覧制限を設けることは重要だと述べる。このシステムを使えば、「誰がどのファイルをどれだけの期間閲覧することができるのかをファイル作成者が設定し、そのポリシーに適合した場合にのみ文書閲覧が可能となる。ファイルを間違って送信した場合にも、すぐにファイルを無効とすれば、誰も閲覧できなくなる」と説明する。
Adobeではこれまで、ソフトウェアベンダーやシステムインテグレータを活用したチャネルにて販売を行っていたが、今後直接販売にも力を入れていくとしている。このことについてリー氏は、「Acrobatはすでに市場で認知されており、製品として顧客にとってもなじみのあるものだ。ただLiveCycleは全く新しいもので、特に大企業をターゲットとしたものになる。その際、販売そのものはチャネルパートナーを通じて行うにしても、より詳細な製品説明は直接行ったほうが良い」と述べ、同社の社内営業部隊を強化する理由について説明した。
オンラインとの連携はYahoo!と
Adobeは今年10月にYahoo!との提携を発表し、Adobe Reader最新バージョンではYahoo!の検索エンジンに直接アクセスできるというツールバーが組み込まれている。この提携の背景についてリー氏は、「Readerは通常どのPCにも入っているものだが、これにインタラクティブ性を持たせたいと考えていた。Yahoo!はオンライン上でさまざまな機能を提供しており、Adobeにとって魅力的だった。一方のYahoo!は、オンラインとオフラインのサービスを結びつける方法を模索しており、両社の思惑が一致したことでこの提携が生まれた」としている。
今回Adobe Readerに組み込まれたYahoo!ツールバー以外にも、今後ウェブページをそのまま保存する際にPDF化できる機能の提供や、現在北米とカナダのAdobeサイトにおいて提供されている、オンライン上でさまざまな文書をPDF化できるASPサービスをYahoo!を介して提供することなどが予定されているという。「今後もこの提携による事業は拡大する予定だ」(リー氏)
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